Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
基礎:デバイス・診断システムⅠ

(S632)

生体内弾性境界における縦波から横波へのモード変換に関する特性評価

Characteristic Evaluation of Mode Conversion from Longitudinal Wave to Shear Wave at Elasticity Boundary in Living Body

新居 弘平1, 田川 憲男1, 八木 晋一2

Kohei NII1, Norio TAGAWA1, Shin-ichi YAGI2

1首都大学東京システムデザイン研究科, 2明星大学情報学研究科

1Depertment of System Design, Tokyo Metropolitan University, 2Graduate School of Information Sciences, Meisei University

キーワード :

【はじめに】
近年,組織内に横波を発生させて,その伝搬時間を測定するShear wave エラストグラフィが注目を集めている.これは,横波の速度が組織の硬さに比例する特徴を利用したもので,組織の硬さを定量的に測定できる.Shear wave エラストグラフィの代表として,ARFIイメージングとトランジエントエラストグラフィがある.ARFIイメージングは,生体深部においても定量的な硬さ計測が可能である一方,音響放射圧による生体への影響が懸念される.トランジエントエラストグラフィは,非常に短い周期の振動を与えるために,反射波との区別が容易であり,動組織の測定に向いている.しかし,外部から振動を与えるために,皮膚や皮下脂肪を弾性波が通過する際,屈折,反射,回折が生じるため,生体深部の診断が困難となる.本研究では,生体への影響を軽減しながら生体深部の診断を可能とする方法を検討することでこれらの問題の改善を図る.そのため,「弾性境界において縦波からのモード変換によって生じる横波は硬さが一様な媒質上でのそれより大きい」という仮説のもと,周囲に対して硬い腫瘍の部分において縦波からのモード変換によって発生する横波を利用し,その部分のみの弾性率を定量的に測定する方式を提案し,新たなShear wave エラストグラフィの提案を目指す.
【方法】
一般に,超音波のような高周波領域の横波は生体中を伝搬しづらい.そこで本研究では,硬さ計測を行いたい領域まで縦波を伝搬させ,そこでモード変換によって生じる横波を利用することにより,横波の長距離伝搬を避け,生体深部の画像化の実現を目指す.その際,生体への安全性を考慮し,横波生成用の縦波の振幅をBモード画像化に用いる程度とすることで,ARFIイメージングで懸念される強い音響放射圧を避ける.システムとしては,横波発生用の縦波を送信する圧電振動子と,横波トラッキング用の圧電振動子を用意する.弾性率が異なる境界は事前に知り得ないので,横波発生用の縦波を全てのエリアに走査して横波が発生する場所を検知し,その後,トラッキングビームを使い,注目箇所での横波の速度を測定する.
【結果】
本研究では,有限要素法解析シミュレータPZFlexを用い,圧電振動子から放射される縦波によって生じる横波の強さを数値計算し,提案法によってどの程度の強度の横波が得られるのかを評価し,このシステムの有用性を検討する.使用する縦波は1.0MHzのものを使用した.その結果,弾性境界においては,境界が存在しないときに比べて縦波からのモード変換により横波が生じやすいことを確認した.さらに,弾性境界に対しての縦波の入射角によって,生じる横波の屈折角,強度に変化が見られた.このことから,モード変換効率が縦波の入射角に依存することが実際に確認できた.実際生体内の腫瘍の硬さを計測する際,各圧電振動子に対する弾性境界の角度は事前に知り得ない.そこで,本研究では,腫瘍の部位に対して圧電振動子を様々な方面に設置し縦波を送信することにより,さまざまな入射角が再現できるようにし,強度が高い横波が発生できるよう工夫を施した.
【考察】
今回の数値実験の結果より,提案方法によって生体内部に横波を発生させることが可能であることがわかった.また,横波の好感度計測のためには,縦波の入射角によるモード変換効率の考慮が重要であることも確認できた.今後は,低い周波数かつ振幅の大きい横波を発生させる縦波のビームパターンの検討,およびファントム実験を行っていく予定である.