Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科

(S629)

光音響イメージングによる軟骨-骨複合体における変形性膝関節症の評価

Evaluation of Osteoarthritis in Cartilage-Bone Complex by Photoacoustic Imaging

和泉 拓哉1, 長岡 亮1, 佐藤 みか1, 萩原 嘉廣2, 矢部 裕2, 西條 芳文1

Takuya IZUMI1, Ryo NAGAOKA1, Mika SATO1, Yoshihiro HAGIWARA2, Yutaka YABE2, Yoshifumi SAIJO1

1東北大学大学院医工学研究科, 2東北大学大学院医学系研究科

1School of Biomedical Engineering, Tohoku University Graduate School, 2School of Medicine, Tohoku University Graduate School

キーワード :

【目的】
変形性膝関節症(OA)は重症化すると歩行困難をきたすため,早期発見が重要である.OAの画像診断として,X線,CT,MRIや超音波(US)が用いられているが,軟骨の評価が難しいため,いまだ確立した方法がない.OAの進行に伴い血管新生が起きることと,光音響(PA)イメージングでは生体内の血管を可視化できることから,PAイメージングをOAの評価に応用する発想に至った.本研究では,OA評価の基礎検討としてラットの膝関節の光音響特性を明らかにし,OAと健常のラット膝関節の計測結果を比較することで,PAイメージングのOA評価に対する有用性を示す.
【方法】
レーザの励起にはマイクロチップレーザ(波長 532 nm,繰り返し周波数 100 Hz,ファイバ出力 420 μJ, パルス幅 3.2 ns),超音波の受信には凹面トランスデューサ(中心周波数50 MHz,焦点距離15 mm)を用いた.水中で固定したラットの健常な膝関節とOAの膝関節をUSとPAで計測し,それぞれの3Dデータを取得した.計測領域は2 mm×2 mmで計測点数は50×50点,深さ方向の計測点数はUSで2048点,PAで1024点,サンプリング周波数は1 GHzであった.OAモデルはラットの片側膝関節を屈位で固定して作成した.固定期間は4週間と8週間とし,固定後に膝関節部を取り出した.
【結果】
図1はラット膝関節の3D画像であり,(a)が健常のラットの膝関節,(b)が4週間固定したラットの膝関節,(c)が8週間固定したラットの膝関節を示している.USをグレースケール,PAをカラースケールで示し,両画像をマージして表示した.I層が軟骨,II層が軟骨下骨,III層が海綿骨を示す.USは軟骨や軟骨下骨の表面からの信号が強く,PAは海綿骨で発生する信号が強いことが分かった.またOAの進行に伴い海綿骨で発生するPA信号が強くなることが分かった.
【考察】
USは音響インピーダンスが異なる軟骨と軟骨下骨の境界で強い信号うぃ示した.一方,海綿骨は骨髄を含むため色が赤く,レーザの波長532 nmに対して吸光度が高くなるので,海綿骨でPA信号が発生したと考えられる.またOAの進行に伴い海綿骨で血管新生が起こるため,海綿骨内の血管密度が増して,結果的に海綿骨で発生するPA信号が強くなったと考えられる.このことから,OAが進行するにつれて海綿骨で発生するPA信号が強くなることがわかり,OA評価の一つの指標となる可能性を見出した.
【結論】
本研究により,PAイメージングによるOA評価の有用性が示された.