Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
血管:血管

(S619)

月経周期がFlow-Mediated Dilatation (FMD)とshear stressに及ぼす影響

Difference in Endothelium-Dependent Flow-Mediated Dilatation of the Brachial Artery by the Menstrual Cycle

末永 弘美, 小田 加奈子, 柴田 美幸

Hiromi SUENAGA, Kanako ODA, Miyuki SHIBATA

山口大学大学院医学系研究科保健学専攻

Faculty of Health Sciences, Yamaguchi University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景と目的】
上腕動脈におけるFMD検査法は,血管内皮機能評価法として広く用いられている.FMD検査法は,反応性充血によりおこる血管内皮細胞へのずり応力(shear stress)がもたらす血管拡張反応を%FMDとして評価するものである.近年,FMDよりもむしろshear stressの心血管イベント危険因子との関連が強いことが報告されるなど,FMD検査におけるshear stress定量化の必要性が明らかになっている.また,エストロゲンは血管内皮保護作用を持つと考えられているが,FMDやshear stressに及ぼす影響についての検討はあまりなされていない.本研究では,若年健常女性の月経周期におけるFMDとshear stressについて検討を行った.
【対象と方法】
対象は若年健常女性34名(21±2歳)とした.対象者には基礎体温測定を指示し,その結果から月経期,卵胞期,黄体期の3期に分類してFMD検査を実施した.FMD測定における駆血条件は,SBP+50 mmHg,5 minの前腕部駆血とした.13.5 MHzの高周波プローブを搭載した超音波診断装置2台を用いて,FMD測定のために安静時および駆血解除後の血管径変化を右上腕動脈の中枢側で,shear stressの測定のために血流速度の変化を右上腕動脈の抹消側で連続記録した.shear stressの指標として,駆血解除直後からピークまでのpeak flow AUC(area under curve)を用いた.また,超音波診断装置によって左右総頚動脈の血管弾性率(stiffness parameter: β値)を測定し,FMD検査終了後の採血によって,shear stress算出のための血液粘度と,エストラジオール(E2),プロゲステロン(P4)を測定した.
【結果】
FMD,shear stress,血管弾性率は,月経周期によって有意な変化は認めなかった.また,E2は,月経期に比べ黄体期がやや高値を示す傾向はあったものの,月経周期における有意な変化は認めなかったが,E2はFMDに対して指数関数的に増加する傾向を認めた.shear stressに対するFMDの比率(FMD/SS)を比較すると,月経期・排卵期に比べ,黄体期での低下傾向を認めた.
【結論】
若年健常女性において,FMD/SSを評価することにより,エストロゲン,プロゲステロンがともにFMD測定値に影響を及ぼす可能性が示唆された.