Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
体表臓器:乳腺Ⅱ

(S616)

造影超音波検査による乳腺腫瘤性病変の良悪性診断について

Contrast-enhanced ultrasonography in the diagnosis of benign and malignant breast mass lesions

中田 典生, 太田 智行, 西岡 真樹子, 宮本 幸夫, 福田 国彦

Norio NAKATA, Tomoyuki OHTA, Makiko NISHIOKA, Yukio MIYAMOTO, Kunihiko FUKUDA

東京慈恵会医科大学放射線科

Department of Radiology, The Jikei University, School of Medicine

キーワード :

【目的】
欧米においては,従来術者依存による客観性に欠ける超音波検査がEBMに適さないことが問題となっており,超音波診断においても客観性が重視される定量的診断手法が重要視されつつある.本研究の目的は乳腺腫瘤の良悪性判定について造影超音波検査の診断的価値をTime Intensity Curve(TIC)などの定量的評価を含めて分析することである.
【対象および方法】
対象はBモード超音波像で描出可能で病理学的診断の得られた乳腺腫瘤,44例46病変(院内倫理委員会: Informed Consentに承諾済の症例と保険収載後の症例,年齢 24-87歳:平均51.3歳).超音波診断装置はGE Logiq 7およびGE Loqiq E9を使用した.撮像法は1回目の造影はPulse Inversion Harmonic( PIH)法にて撮像した.超音波探触子はL9(中心周波数9MHz)リニア型探触子を使用した.造影剤はソナゾイド0.5ml ボーラス静注し,直後に生理食塩水10mlを静注し,造影超音波像を取得した.保険収載後の15病変(15症例)では,1回目の投与後約4−5分以後にソナゾイド0.5mlを1回目同様のボーラス静注にて追加投与して腫瘤全域をカバーするように,Amplitude Modulation(AM)法にてスイープスキャンを施行した.造影検査はいずれも動画像で記録した.また検査終了後microvascular imaging (MVI)やTICによる分析を行った.
【結果】
病理学的診断は悪性腫瘍31病変(浸潤性乳管癌20病変,非浸潤性乳管癌4病変,浸潤性小葉癌6病変,粘液癌1病変),良性腫瘤15病変(線維腺腫と良性葉状腫瘍14病変,嚢胞内乳頭腫1例)であった.造影超音波での良悪性の判定は,過去の文献的考察を元に作成し基本的にはMVIにて判定した.悪性腫瘍はBモード像で低エコーに描出される部位より外側が染まるperipheral enhancement,Bモード像で低エコーに描出される部分内に造影超音波にて線状ないし曲線状に染まるstraight hair/curl hair vesselsを呈するものを悪性と判定.Bモードで低エコーに描出される部位に樹枝状の血管が描出されるtree-like patternと低エコー部分が全く染まらないものを良性とした.この判定基準によると正確度91.3%,感度90.3%,特異度93.3%であった.MVIによる良悪性判定は統計学的に有意な診断法と考えられた(P<0.001).また最新の文献によると,SonoVueを用いた乳腺の造影超音波検査ではTICによる良悪性判定も有用とされている.造影早期に染影のピークあり,その直後にwash-outが明確になっているパターンを悪性,染影が持続ないしはなだらかに下降するためwash-outが不明瞭なパターンを良性としており,われわれのソナゾイドを用いた症例についても基本的にこのパターンになるかを検証した.悪性でみられるピークは投与後30秒以内に認められた.さらにAM法によるスイープスキャンでは,Bモードで低エコーを呈する部位およびその周囲に染まりを伴う病変を伴っている病変が特に浸潤性乳管癌の病変で認められた.
【結論】
われわれは従来MVIによる腫瘤内の微小血管の病態が良悪性の判定に有用であることを示してきたが,TICによる定量的診断も考慮した診断法の確立が重要と考えられた.