Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
体表臓器:乳腺Ⅱ

(S616)

乳癌術前治療後効果判定におけるソナゾイド造影超音波の検討

A stydy of contrast-enhanced ultrasound using Sonazoid for response evaluation in breast cancer after neoadjuvant therapy

中村 卓1, 3, 平井 都始子2, 小川 朋子3, 高橋 亜希4, 伊藤 高広4, 丸上 永晃4, 武輪 恵4, 小林 豊樹1, 中島 祥介1

Takashi NAKAMURA1, 3, Toshiko HIRAI2, Tomoko OGAWA3, Aki TAKAHASHI4, Takahiro ITO4, Nagaaki MARUGAMI4, Megumi TAKEWA4, Toyoki KOBAYASHI1, Yoshiyuki NAKAJIMA1

1奈良県立医科大学附属病院消化器外科・小児外科・乳腺外科, 2奈良県立医科大学附属病院中央内視鏡・超音波部, 3三重大学医学部附属病院乳腺外科, 4奈良県立医科大学附属病院放射線科

1Department of Surgery, Nara Medical University, 2Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University, 3Breast Center, Mie University Hospital, 4Depertment of Radiology, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
超音波造影剤ソナゾイドは乳腺腫瘍の良悪性鑑別診断に対する有用性に優れていることが第3相臨床試験により証明され,2012年8月より乳腺病変の診断に対して保険適応が承認された.術前化学療法により病理学的完全奏効が得られた症例は進行乳がんにおいても予後良好であることより,画像診断により正確な効果判定ができれば,手術を回避できる可能性もある.造影MRIが効果判定に有用であるとする報告が散見されるが,現時点では完全奏効の判定にはまだ十分とは言えない.造影超音波では,MRIの造影剤とは異なり血管外への漏出がないため腫瘍による新生血管だけを評価できる可能性がある.そこで,術前化学療法を施行した症例に対して術前に造影超音波を施行し,造影効果を病理学的効果判定と比較し検討した.
【対象】
術前化学療法後に造影超音波を施行した14例.病理学的効果は,Grade3および2bの効果判定が6例,2aが2例,1bが1例,1aが5例である.乳房造影超音波は院内倫理委員会認可のもと臨床試験として実施した.
【方法】
使用装置はLOGIQ E9で,9LまたはML6-15プローブを使用した.Bモードで腫瘍を観察後,最大断面で造影USを施行した.ソナゾイド0.01ml/Kg体重を静注し,振幅変調法(amplitude modulation: AM)で,MI値は0.2程度,フォーカスは病変の最深部付近とした.造影剤静注前から静注後約40秒は断面を固定して観察した後,病変全体をスイープして観察し,造影早期相の動画から5ー10秒程度の積算画像とTime intensity curve(以下TIC)を作成した.Bモード所見,積算画像による造影パターン,病変部や辺縁部,周辺の造影される部位にROIを取ってTICを作成した.
【結果】
1.Bモード所見:Grade3および2bの2例は,Bモードで病変を指摘できなかったが,残る12病変は,低エコー腫瘤として病変が捉えられた.2.積算画像による造影パターン:Grade3および2bでBモードでも病変が消失した2例は,1例は明らかな造影効果を認めず,1例は病変が存在したと思われる周辺に淡い造影効果を認めた.他の4例は,低エコーに描出される病変の中心部には造影効果を認めず,辺縁部にだけ周囲組織と同等の造影効果を認めた.2aの2例は低エコー病変の一部にだけ造影効果を認めた.残りの1a, 1b6例はいずれも低エコー部およびその周囲に強い不均一,不整形の造影効果を認めた.3.TIC:Grade1の症例は全て造影開始から10秒以内にピークになりその後washoutするカーブが得られた.3および2bは漸増性または緩やかに造影されプラトーになりwashoutのないカーブを示す傾向があった.
【結語】
超音波ではBモード像だけでは治療後の瘢痕部も腫瘍残存部も同じような低エコーとして描出され,判定に苦慮する事がある.造影超音波を行い,Time intensity curve(以下TIC)などの血流情報も加われば,より正確な効果判定ができる可能性がある.さらに症例の蓄積が必要と考えられた.