Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
体表臓器:甲状腺

(S611)

甲状腺腫瘍手術症例の術前超音波診断と術後病理組織診断の不一致症例の検討

Discrepancy in the diagnosis of thyroid tumor between preoperative ultrasound findings and postoperative pathological diagnosis

松本 雅子1, 吉村 弘1, 向笠 浩司1, 國井 葉1, 渡邊 奈津子1, 佐々木 栄司3, 藤澤 俊道3, 北川 亘2, 伊藤 公一2

Masako MATSUMOTO1, Jaeduk YOSHIMURA1, Koji MUKASA1, Yo KUNII1, Natsuko WATANABE1, Eiji SASAKI3, Toshimichi FUJISAWA3, Wataru KITAGAWA2, Koichi ITO2

1伊藤病院内科, 2伊藤病院外科, 3伊藤病院診療技術部

1Department of Internal medicine, Ito Hospital, 2Department of surgery, Ito Hospital, 3Department of medical technology, Ito Hospital

キーワード :

【目的】
当院で甲状腺腫瘍で手術を施行した症例について,術前超音波診断と術後病理組織診断を比較し,不一致症例について検討した.
【対象】
当院で3ヶ月間に甲状腺腫瘍で手術を施行した286例.男性57例,女性229例.術後病理組織診断の内訳は,甲状腺乳頭癌176例(61.5%),腺腫様甲状腺腫32例(11.2%),結節性甲状腺腫29例(10.1%),濾胞腺腫30例(10.5%),甲状腺濾胞癌15例(5.2%),甲状腺髄様癌1例(0.3%),低分化癌1例(0.3%),橋本病1例(0.3%),Adenolipoma1例(0.3%)であった.
【方法】
術前超音波検査を見直し,明らかな悪性所見のもの及び,悪性を疑い細胞診あるいはカラードプラを勧めた場合は悪性とした.また,術前超音波診断で悪性としたが指摘している場所が異なる場合や,同じ悪性でも術前超音波診断と実際の病理組織が異なった場合も不一致症例とした.術前超音波診断と術後病理組織診断を比較検討した.
【結果】
超音波検査で良性と診断されたが病理組織で悪性であった症例は94症例中20例(21.3%),超音波検査で悪性と診断されたが病理組織で良性であった症例は192症例中21例(10.9%)あり,正診率85.7%であった.不一致症例のパターンとしては,①石灰化像を示す腫瘍のうち,1)粗大石灰化像(2例):超音波検査で甲状腺乳頭癌を疑ったが,病理組織診断では腺腫様甲状腺腫だったもの1例・橋本病であったもの1例 2)微細石灰化像(2例):超音波検査で良性を疑ったが病理組織診断で甲状腺乳頭癌であったもの1例,超音波検査で悪性を疑ったが病理組織診断で腺腫様甲状腺腫であったもの1例 3)腫瘍の辺縁に石灰化を伴う像(1例):超音波検査で悪性を疑ったが病理組織診断で結節性甲状腺腫であったもの 1例 ②大きな結節性甲状腺腫に合併した乳頭癌(10例) ③多発する嚢胞に合併した微小乳頭癌(2例) ④濾胞性腫瘍の鑑別(21例):超音波検査で濾胞癌を疑ったが,濾胞腺腫であったもの(16例),超音波検査で濾胞腺腫を疑ったが濾胞癌であったもの (5例) ⑤その他の腫瘍:髄様癌・Adenolipomaなどの腫瘍(3例) ①のうち,エコーガイド下穿刺吸引細胞診で判定できたものは5例中4例(80%)であった. ②のうち,incidentalな乳頭癌の4例を除いた6症例の結節性甲状腺腫の大きさは41.7±16.6mmであった.また,微小乳頭癌の位置は結節性甲状腺腫と同側2例・対側4例で,結節性甲状腺腫の数は多発5例,単発1例であった.
【まとめ】
①・⑤は超音波検査で悪性が疑われる場合は,エコーガイド下穿刺吸引細胞診が有用である.また,直径4cm以上の結節性甲状腺腫を認める場合にはそちらに注意が行きやすく,特に対側の合併する他の腫瘍を見逃さない事が重要である.多発する嚢胞に合併した微小乳頭癌にも注意が必要である.