Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
体表臓器:甲状腺

(S610)

Shear Wave Velosityを用いた甲状腺組織弾性評価の検討

Elasticity of Thyroid Gland by Shear Wave Velosity

貴田岡 正史1, 重田 真幸1, 三谷 康二2

Masafumi KITAOKA1, Masayuki SHIGETA1, Kouji MITANI2

1公立昭和病院内分泌代謝内科, 2東京大学大学院医学系研究科腎臓内科学・内分泌病態学

1Division of Endocrinology and Metabolism, Showa General Hospital, 2Division of Nephrology and Endocrinology, The University of Tokyo Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
甲状腺は表在臓器であり,そのため組織弾性評価は他の領域に比べて比較的早い時期から臨床応用が試みられてきた.即ち,組織弾性評価を基にしてBasedow病や慢性甲状腺炎など病態が評価可能か否か,腫瘍の硬さを良悪性の鑑別に利用できるかどうかが研究されてきた.しかし甲状腺は前頚部に存在することから外部入力による歪みを指標とする組織弾性評価には問題点も指摘されていた.術者にスキルよる違いや,複雑な生体内の構造による外部入力の不均一化や組織間のズレなどによるアーチファクトが存在する点である.また組織の歪みを弾性評価の指標としており,加える外圧が大きく変動し数値パラメーターとして演算困難であるため,定量性に欠けていた.これらの点を解決する一つの方法として音響放射圧(Acoustic Radiation Force Impulse ARFI)によって組織にひずみを生じさせ,それが元に戻ろうとする際に生じる剪断弾性波(shear wave)の速さを測定して組織の硬さの評価する装置が臨床応用されている.
【目的】
これまでVTTQ(Virtual Touch Tissue Quantification)を用いて検討し甲状腺における組織弾性評価に際して測定条件とびまん性病変における弾性度定量の臨床的有用性を報告してきた.すなわち測定条件として,甲状腺は呼吸動揺が存在し,これが測定値の変動に関わるため,測定時被検者は一時的に息止めをして検査を施行する必要があること,また検者がプローブを皮膚に押し当てる際の圧力でも値が明らかに変わることが確認され,検査時にはプローブ゛による外力が生体にできるだけ及ばない手技が重要であることである.今回,VTTQをさらに改良し,定量とともに弾性イメージング機能が付加されたVirtual Touch IQを用いてその臨床的有用性について検討を行った.
【対象】
まず,正常甲状腺23例についてshear wave velocityを検討した.ついで当院で甲状腺超音波検査を行った慢性甲状腺炎10例を検討対象とし,両群の比較を行った.
【方法】
機器はSiemens Medical Solutions USA社製のACUSON S3000を使用した.関心領域にshear wave 測定のROIを設定し,shear wave velocityの測定値を集積した.データ取得後ただちに弾性イメージングとして表示され,連続的に任意の部位のshear wave velocity値を得ることが可能である.正常甲状腺例と慢性甲状腺炎例について個々の症例ごとに4ないし6ポイント測定しその平均をshear wave velocity値とし比較検討した.
【結果】
正常群ではshear wave velocityは最大値2.51最小値1.78中央値2.10であり,慢性甲状腺炎群では最大値3.08最小値1.97中央値2.35であった.慢性甲状腺炎で統計学的に有意(P<0.05)に高値であった.
【結語】
Virtual Touch IQは甲状腺領域における組織弾性評価として弾性イメージングを参照しながら任意のポイントのshear wave velocity値を連続的に測定可能で臨床的に有用と考えられた.本法は検査が術者のスキルに追わない点で優れているがその検査値を十分な精度で得るためには,検査法の標準化が重要であった.