Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
体表臓器:甲状腺

(S609)

腹部超音波検査時に施行した甲状腺スクリーニング超音波検査の検討

thyroid gland echographic screening with abdominal echographic examination

児玉 尚伸

Msanobu KODAMA

守山市民病院消化器内科

Gastroenterology, Moriyma City Hospital

キーワード :

【背景】
甲状腺癌の組織型の中では乳頭癌が最も多く(92%),甲状腺乳頭癌にはしばしば偶発癌が認められ,その発見には超音波検査が貢献している.甲状腺悪性腫瘍の画像診断には超音波検査,CT検査,シンチグラフィー,FDG-PET検査等があるが,甲状腺腫瘍の発見および質的診断には超音波検査が最も有用である.甲状腺スクリーニング超音波検査を行う機会としては甲状腺検診,頸動脈エコー検査時が多いが,腹部エコー検査の際に甲状腺超音波スクリーニング検査を行うことも可能である.
【目的】
腹部エコー検査時に,スクリーニング目的に甲状腺エコー検査を施行し,発見される甲状腺結節性病変の臨床像を検討した.
【方法】
H23年9月からH24年9月に腹部エコー検査時に甲状腺エコー検査を施行した71症例について甲状腺結節性病変の発見頻度,大きさ,発見個数(1人当たり),超音波所見,経過について検討した.良悪性の判断は日本超音波医学会用語・診断基準委員会の超音波結節超音波診断基準(超音波医学 2011;38:667-668)に基づいて行った.
【結果】
患者背景 性別は男性44人,女性27人と男性がやや多く,年齢は60-79歳までが53%を占めた.腹部エコー検査の依頼理由の内訳は,肝臓評価目的32人(45.7%),胆のう評価目的11人(15.5%),膵臓評価目的6人(8.4%),泌尿器評価目的9人 (12.6%),その他13人 (18.3%)であった.1.発見頻度 甲状腺結節性病変の発見頻度は36.6%(26人/71人)であり,甲状腺癌の発見頻度は1.4%(1人/71人)であった.甲状腺結節性病変を指摘され,甲状腺癌であった割合は3.8%(1人/26人)であった.2.結節の大きさ 甲状腺結節の大きさは平均8.1mm(範囲2.2-32.0mm)であり,0-10mmの小病変が81%(21/26)を占めた.結節の大きさを男女別に検討すると,男性平均6.2mm(範囲2.4-16mm),女性平均10.4mm(範囲2.2-32mm)とやや女性の方が大きい傾向があった.3.結節数 発見される結節は平均2.07結節(範囲:1−8結節)であり,単発が50%(13/26)を占めた.結節数を男女別に検討すると,男性平均1.71結節(範囲1-4結節),女性平均2.50結節(範囲1-8結節)と女性の方がやや結節数が多い傾向があった.4.超音波所見 甲状腺結節の超音波所見はのう胞性13人(内部に構造なし7人,充実成分あり4人,隔壁あり2人),充実性13人(良性12人,悪性1人)であり,充実性が半数を占めた.超音波所見を男女別に検討すると,女性に充実性病変が多い傾向がみられた.大きさ別に検討すると,10mm以下ではのう胞性病変が多く(13/21 61.9%),10.1mm以上では全例が充実性病変(5/5 100%)であった.5.経過 超音波検査を受けた中で精査を受けた人の割合は15.5%(11/71)であり,細胞診を受けた人の割合は4.2%(3/71)であった.甲状腺がんの診断で手術を受けた人の割合は1.5%(1/71)であった.
【結語】
腹部エコー検査時に甲状腺スクリーニングを施行し,施行症例の36.6%に甲状腺結節性病変,1.4%に甲状腺癌を発見した.