Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
体表臓器:乳腺Ⅰ

(S608)

地域がん診療拠点病院の乳腺外科外来における最適な超音波検査体制確立への取り組み

Proper system of breast sonolographic examination at the breast service in regional cancer base hospital

村上 茂

Shigeru MURAKAMI

広島市立安佐市民病院外科

Surgery, Hiroshima City Asa Hospital

キーワード :

【背景】
乳癌患者数は増加しており,乳癌検診の受診者数も増加している.こういった患者の多くは専門外来に受診する傾向にあり,地域のがん診療拠点病院では乳腺外科を標榜する機関が増加している.その一方で乳腺専門医はわずかな人数で,診断,検査,手術,薬物療法と多くの分野をカバーし無ければならず,慢性的なマンパワー不足に陥っている.乳腺超音波検査は乳腺診断において必須なモダリティであるが,その制度管理には検査機器の性能,管理のハード面だけでなく,検査施行者の技術,経験,さらには検査にかけることのできる時間的な余裕が必要となる.一般的な乳腺外科外来においては,乳腺超音波検査は乳腺外科医が行っている施設が多いが,外来診療の間で精度の高い検査を行うことが大きな負担となっている.
【対象と方法】
当院は大都市近郊に位置する病床数527床の地域がん診療拠点病院であり,都市ベッドタウンから山間部までの医療圏を担当する.広範な地域を担当しなければならないが,この地域のおけるがん診療拠点病院は当院のみ,乳腺専門医は演者1名というのが現状である.演者が当院に赴任する前も乳腺専門医1名が乳腺外来を担当していたが,超音波検査も全てを担当しており,かなりの負担となっていた.演者は2010年7月から赴任したが,十分な超音波検査を行う時間の確保が困難であると判断し,乳腺超音波検査を臨床検査技師に委託する方針で検査体制の見直しを行った.2010年9月から職種横断的な院内の乳腺症例カンファレンスを開始し,臨床検査技師の参加をお願いした.同年10月から実際の検査に女性の臨床検査技師4名が立ち会うようになり,2011年1月からは技師が検査を実施し,医師が所見を確認する体制に移行した.
【結果】
2011年1月から2012年12月までに1200件の乳腺超音波検査を技師が実施した.2010年7月から12月までの医師が担当していたときと乳癌患者に術前に施行した超音波検査を比較した.医師は症例あたり平均4.5枚の画像を保存していたが,技師は;平均11.2枚の画像を保存しており,さらには動画,血流ドップラー,エラストグラフィなど詳細な観察記録がなされていた.データのバックアップ,機器のバージョンアップ,メンテナンスも担当するため,検査体制の維持の上でも重要な役割を果たしている.また技師が超音波検査を実施している間,医師は乳癌患者の診察に専念できるため,医師は効率的に業務を行うことができた.このことは医師の負担軽減につながるだけでなく,患者の待ち時間短縮にもつながり,病院のセイフティマネジメントの面からも有用であった.さらに定期的にカンファレンスを繰り返すことから,技師は検査結果のフィードバックを受けることができ,そうした討議の中から臨床的疑問点が生じ,それに対する検討を行うことが,技師による臨床研究の推進,学会活動にもつながった.
【結語】
乳腺超音波検査を臨床検査技師が担当することで,結果的により詳細な観察,記録,精度管理がなされるようになった.また乳腺専門医は効率的に外来業務をこなすことができるようになったことから,医師の負担軽減にもつながった.チームとして乳腺外来のレベルアップにつながることから,地域がん診療拠点病院の乳腺外科外来において,超音波検査を臨床検査技師が担当することは有用と考えられた.