Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
体表臓器:乳腺Ⅰ

(S607)

乳腺嚢胞性病変の良悪に関する検討

ultra sonic evaluation of the cystic breast tumor

安井 真由美, 改井 修, 三輪 里織, 楠本 文子

Mayumi YASUI, Osamu KAI, Saori MIWA, Fumiko KUSUMOTO

小牧市民病院放射線科

the department of radiology, Komaki City Hospital

キーワード :

【目的】
乳腺嚢胞性病変は,良悪性の診断に迷うことがある.今回,超音波画像で多彩な所見を呈し診断に苦渋した症例の所見を検討した.
【対象と方法】
2011.5月〜2012.7月の間に乳腺超音波検査を施行した症例中,良悪の診断に苦渋した多彩な超音波画像を呈し,悪性を疑った嚢胞性病変7症例を病理診断結果と照合検討した.
【結果】
症例1:左乳頭下に22.9×22.6mm大の境界一部不明瞭な低エコー腫瘍を認める.内部にcystic spaceを伴い充実性部分は不均質,後方エコー増強を認める.また前方境界線の断裂が一部認められ,後方脂肪層への浸潤は認めない.⇒病理診断 psudo invensive papilloma 症例2:左乳房D領域に,25.8×22.6mm大の内部不均質,境界明瞭粗像,辺縁にcystic spaceを伴う縦横比の高い,後方エコーの増強を伴う,凹凸のある腫瘍を認める.乳腺前方境界線の断裂はなく,後方脂肪層への浸潤も認めない.⇒病理診断 phyllodes tumor 症例3:左乳房A領域に,6.9×7.0mm大の境界明瞭一部粗雑,辺縁にcystic spaceを有する腫瘍を認める.縦横比が高く軽度の後方エコーの増強が認められる.前方境界線は一部断裂しているように見える.⇒病理診断 mucinous ca. 症例4:左乳頭直下に35.0×18.6mm大の多少凹凸のある腫瘍を認める.腫瘍辺縁に充実性部分とcystic spaceを認め,充実部のエコーレベルはやや低く不均質,縦横比は高く,後方エコーは増強している.乳腺前方境界線の断裂はなく,後方脂肪層への浸潤も認めない.⇒病理診断 intraductal papilloma ADH LCIS 症例5:左乳腺CDE領域に凹凸のある壁の厚いcystic spaceと不整形の充実成分を有す腫瘍を認める.充実性部分の辺縁は粗雑で周囲乳腺構造の引きつれをを伴っている.乳腺前方境界線は断裂しているように見える.後方脂肪層への浸潤も認めない.⇒病理診断 intraductal papilloma susp. 症例6:右乳房CD領域に26.1×16.5mm大の腫瘍を認める.境界一部不明瞭,後方エコー増強.縦横比が高く,充実部分の内部エコーはやや不均質に見える.cystic spaceは腫瘍の辺縁と内部に認める.乳腺前方境界線の断裂はなく,後方脂肪層への浸潤も認めない.⇒病理診断 intraductal papilloma susp. 症例7:左乳房CD境界に11.9×12.5mm大のcystic space内に不整形の充実性部分を有する腫瘍を認める.境界明瞭一部粗像,後方エコー増強している.乳腺前方境界線は一部断裂しているように見える.後方脂肪層への浸潤も認めない.⇒病理診断 Intraductal papilloma susp.
【考察】
今回検討した乳腺嚢胞性腫瘍は,超音波画像上悪性を疑うものであったが,7症例中4症例が良性腫瘍であった.悪性を疑う乳腺嚢胞性腫瘍の半数近くは良悪の診断が出来なかった.また,それぞれの検者によって画像所見の記載に混乱も見られた.
【結語】
Bモード画像上,多彩な嚢胞性腫瘍の良悪の診断は,充実性腫瘍に比べて診断基準に乏しく困難であると考えられた.今回検討した症例の半数以上が良性であったことから画像の如何にかかわらず良性疾患を念頭に置くべきとも考えられた.