Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
腎泌尿器:腎臓・後腹膜

(S603)

天災から超音波画像データを守るための静止画・動画のリアルタイム外部保存の試み

Development of Ultrasound Image Storage System in the Cloud

棚橋 善克1, 菅野 隆広2, 木皿 正志3

Yoshikatsu TANAHASHI1, Takahiro KANNO2, Masashi KISARA3

1棚橋よしかつ+泌尿器科泌尿器科, 2東北オータス医療事業本部, 3東北オータス

1Genito-urinary Surgery, The Office Urology Tanahashi, 2Medical Division, Tooku Otas Co.Ltd., 3Tohoku Otas Co.Ltd.

キーワード :

【はじめに】
2011年3月11日の東日本大震災では,東北太平洋沿岸地域におしよせた想像を絶する高さの津波により,多くの人的・物的損失を被った.沿岸部のほとんどの病院でも,カルテをはじめ各種画像データがことごとく流出した.私たちは,超音波画像をはじめ各種の画像データを,このような災害から安全・確実に守るためにいかなる手段があるかを模索し,クラウドコンピューティング技術を活用した外部保存システムを開発したので報告する.
【システム構成】
超音波診断装置,内視鏡装置からのS信号をPCに取得し,さらにLAN(1GBit)を介して院内の小型PCサーバで記録・保管・検索・再生・書き出しを連携させる.さらに,サーバデータはインターネットVPN(上り100MBit,下り200MBit)を通じてクラウド上にバックアップ保管される構成とした.このシステムでは,①超音波検査実施と同時に,超音波装置に接続されたPCから自動で静止画,動画データが転送され,②院内サーバに自動的にリアルタイムで記録・バックアップされる.③院内サーバに蓄積された静止画,動画データは,夜間の決められた時間帯にクラウドサーバに転送され,さらにバックアップされる.④私たちのクラウドサーバは,津波でも浸水しない高度に位置し,震度7の地震にも耐えうる免震構造の施設に設置されている.ちなみに震度は0-7(5,6はさらに強弱に分けられる)の10段階で表され,東日本大震災時の仙台市内の震度は6強であった.
【結果】
本システムの使用により,①検査時間の短縮効果:一例として,検査時間がほぼ一定している経直腸的超音波検査(TR-US)時には,複数断面を静止画記録する場合に比べて,検査時間の短縮ができた.具体的には,横断面描出時17±2.2秒対40.6±1.24秒,縦断面描出時15.5±1.9秒対39.1±6.12秒と,このシステムを使わない場合にくらべて大幅に短縮された.②本システムでは,クラウドサーバへのデータ転送が自動で行われるので,通常の超音波検査とほとんど同じ手順のみでデータ蓄積が行われるため,保存に必要な手間は不要であった.③動画再生を行いながら任意の瞬間瞬間の静止画をワンクリックで記録・書き出しできるので,利便性の大幅向上が計られた.これは,無限数の静止画を保存するのと同じ効果が得られた.
【考察】
私たちの開発した外部保存システムは,①簡便性・利便性,震災時の安全性に優れている.仮に院内サーバが破壊された場合でも,クラウド上にデータが残っている安心感と患者メリットは大きい.②院内サーバには,500GBあたり約500万枚の静止画,または約830時間の動画(MPEG映像をH.264に圧縮保存)が保管でき,これはリアルタイムに閲覧できる.③一定期間以上古い画像も,クラウド上からダウンロード再生できる.④この場合,静止画はほぼリアルタイム,動画は1分につき約6秒程度でダウンロードでき,診療にストレスを感じることはほとんどなかった.⑤また,既存のブルーレイディスクなどで保存する場合にくらべ,記録時にタイトル付与が自動的に行われることや,再生時にスライダックで任意の画像を抽出できるなど,保存・検索作業が容易であるなど,診療時間の大幅な短縮がはかられる.⑥本システムは,厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第4.1版 8.1.2に準拠させるため,患者情報データベースに関してのみ院内でのバックアップとし,患者情報についてはいっさい外部に記録しないこととしたが,患者情報も外部でバックアップすべきかどうかについては,今後の検討課題である.