寺澤 良夫¹, 広田 むつ子², 須藤 誠二², 野村 禎子², 野村 幸宏², 鈴木 とよみ², 五十嵐 やよい²

Yoshio TERASAWA¹, Mutsuko HIROTA², Seiji SUDO², Yoshiko NOMURA², Yukihiro NOMURA², Toyomi SUZUKI², Yayoi IGARASHI²

¹仙台社会保険病院内科, ²仙台社会保険病院超音波検査室

¹Internal medicine, Sendai Shakaihoken Hospital, ²Ultrasonic Laboratory, Sendai Shakaihoken Hospital

キーワード :

【はじめに】
嚢胞腎（PCK, polycystic kidney）と腎癌（RCC）の発生頻度と因果関係についての報告は少ない^1）2）．PCKのRCCの10人について本学会で発表したが（2008）^3），さらに16人と症例が増えたので報告する．
【対象】
1985.4〜2012.6までに当院で手術で組織学的に確認できたPCKのRCC16人（このうちHD症例15人）を対象とした．
【結果】
1.PCKの診断　a）全例US上，両腎大きく，腎嚢胞多発，肝嚢胞合併　b）家族暦　有り：9人，無し：2人，不明：5人　c）HD開始前後（15人）のUS上，多数の腎嚢胞を有した例：11人，不明：4人　d）結節性硬化症の合併：1人　2.血液透析例（HD）PCKのRCC16人（19RCC，両腎癌3人）のうち，HD症例15人（17RCC）．両腎癌の1人：L.RCC，HD（-）のとき，R.RCC HD後手術．3.PCKのRCCのUS所見（16人，19RCC）嚢胞内充実姓腫瘍全例halo（-）power doppler（+）：92％（11RCC/12RCC）　4.US・CT・Angio.診断US：16人（19RCC，100％）CT：4人（4RCC，22％）Angio.：0（0％，4人・4RCC実施）　5.摘出腫瘍径1cm＞：5RCC1＜〜≦2 ：6RCC2＜〜≦4 ：5RCC4＜〜≦6 ：1RCC6＜：2RCC　6.組織診断（16人，19RCC）　1）papillary RCC，10RCC（8人，52％）　2）granular cell carc. 4RCC（4人，21％）　3）spindle cell carc. 3RCC（2人，16％）　4）clear cell carc. 2RCC（2人，11％）7.PCKとRCCの頻度2005.12までの症例で検討した．HDのRCC（手術例）：165人（199RCC，両腎癌34人）．HD・PCKのRCC・9人でその頻度は6.2％（9/145），HDのRCC検出率2.8％（165/5,876，両腎癌を1人とした^3） ）の2.2倍，一般人（0.10％，60/57, 411）の62倍多い^3）4）．8.RCCと誤診例（6人）adenoma：2人血腫：2人フィブリン様肉芽：1人高度繊維化：1人
【考察】
PCK症例のRCC頻度についての報告は少ない．今回当院で手術で確定診断のついたPCKのRCCについて検討した．全例（16人，19RCC）USスクリーニングで検出され，その診断脳はCT，MRI，Angio.と比較して最も優れていた．その組織所見は，papillary RCCが52％，granular cell carc.が21％，clear cell carc.が11％の頻度でpapillary RCCが多く，その原因は不明であった．PCK・HD症例のRCCは6.2％の高頻度発生であり，非透析例も含め年一回のUSスクリーニングでRCCの有無について検査することが必要と思われた．
【参考文献】
1）東間　紘，中沢速和：腎癌のすべて，p274-276，Medical View，2003
2）小出　輝，東原英二：多発性嚢胞腎，p178-182，南山堂，2001
3）寺沢良夫，広田むつ子，須藤誠二，野村禎子，野村幸宏，鈴木とよみ：嚢胞腎と腎癌，第81回日超医講演抄録集：35：p458，2008
4）寺沢良夫，広田むつ子，須藤誠二，他：腎癌の検出率，第81回日超医講演抄録集：35：457，2008