Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
腎泌尿器:その他

(S602)

精巣の虚血性病変に対するソナゾイド造影USの有用性

Utility of Sonazoid enhanced-Ultrasonography for evaluation of testicular ischemic disorders

丸上 永晃1, 平井 都始子1, 山下 奈美子1, 吉田 美鈴1, 森本 由紀子1, 武輪 恵2, 伊藤 高広2, 齊藤 弥穂2, 高橋 亜希1

Nagaaki MARUGAMI1, Toshiko HIRAI1, Namiko YAMASHITA1, Misuzu YOSHIDA1, Yukiko MORIMOTO1, Megumi TAKEWA2, Takahiro ITO2, Miho SAITO2, Aki TAKAHASHI1

1奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部, 2奈良県立医科大学放射線科

1Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University, 2Radiology, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
超音波は急性陰嚢症に対して第一に施行する検査であり,精巣内血流評価は臨床的に最も重要である.しかし従来のカラードプラによる血流評価では診断困難な症例も少なくない.今回我々はソナゾイド造影USを施行し,造影検査で従来の検査法に付加的情報が得られるかについて検討を行った.
【対象と方法】
本研究は院内倫理委員会の承諾を得ている.陰嚢痛を訴え精巣捻転などが疑われた5例(年齢:14〜61歳).使用装置はGE社製 LOGIQ 7(使用プローブ; 9L, 造影モード; CHI法)あるいはLOGIQ E9 (6-15L, Amplitude modulation法)で撮影.従来の検査の後に,ソナゾイド(約0.5ml)を注入して造影USを撮像した.手術所見や造影MRと,US所見とを比較し造影USの有用性を検討した.
【結果】
<精索捻転の2例> Bモードで精索の捻れが明瞭で,カラードプラで精巣内部のカラー表示は全く無く,精索捻転による完全虚血が疑われた.造影USでも精巣内の濃染は全く認めず,手術所見とも一致した.<精巣部分梗塞の2例> Bモードでは領域性の低エコー領域を認め,カラードプラでは一部にのみカラー表示を認めた.従来法では精巣腫瘍との鑑別が困難であった.造影USを追加すると領域性に濃染がなく,精巣部分梗塞と診断できた.造影MRで精巣部分梗塞と最終診断された.<精巣壊死の1例> Bモードでは精巣上体の腫大があり精巣上体炎・精巣炎が疑われたが,精索の捻転や,カラードプラで精巣内部のカラー表示は無く臨床診断は困難であった.造影USを追加すると,精巣上体には濃染を認めるものの精巣内には全く濃染はなく,精巣梗塞と診断した.手術により高度な炎症細胞浸潤を伴った精巣壊死と最終診断された.
【結語と考察】
精巣造影USはカラードプラよりも詳細に血流評価が可能であった.ただし,通常法で診断し得る精索捻転症例に対しては,造影USを追加する意義は乏しかったが,部分梗塞や完全壊死など診断に苦慮する場合には造影USを追加する意義は高かった.本研究では診断に苦慮する小児の精索捻転症例は含まれていないが,造影USを追加することで,より高い確信度を持って診断できる可能性がある.これまで従来のUS検査法で診断困難な場合,次の一手として手術などの侵襲的な診断法が行われてきたが,造影USはそれらに置き換わる非侵襲的な診断法として有用であると考えられた.