Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
腎泌尿器:腎臓・後腹膜

(S602)

腎腫瘤鑑別における造影超音波検査の有用性

Usefullness of Contrast-enhanced ultrasound examination for the renal mass

大熊 相子1, 山本 徳則2, 稲葉 はつみ1, 松原 宏紀1, 後藤 百万2

Aiko OOKUMA1, Tokunori YAMAMOTO2, Hatsumi INABA1, Hiroki MATSUBARA1, Momokazu GOTOU2

1名古屋大学医学部附属病院医療技術部, 2名古屋大学医学系研究科病態外科学講座泌尿器科学

1Department of Medical technic, Nagoya university hospital, 2Depertment of Urology, Nagoya University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
腎腫瘤において腎細胞癌の鑑別は主にCT・MRI・超音波等の画像検査を用いて行われる.超音波検査ではBモードやカラードップラーのみでは判断に難渋するケースも多くある.今回我々はソナゾイドを用いた造影超音波検査が腎腫瘤鑑別の一助となり得るかを検討した.
【対象】
当院で2009年4月から2012年8月までに患者の承諾を得て実施した腎腫瘤鑑別目的の造影超音波検査64例のうち,腎不全や腎梗塞等の腎血流に影響を及ぼすものや30秒程度の息こらえが困難であったものを除いた30例について検討を行った.30例中良性腫瘤12例(出血性のう胞4例・血管筋脂肪腫4例・その他4例),悪性腫瘤18例(clear cell carcinoma12例・papillary renal cell carcinoma 3例・その他3例)であった.なお,術後の症例は病理の最終診断を,手術予定のない症例および術前の症例は他の画像検査等で推定された診断で分類した.
【方法】
測定機器としてGE社製LOGIQ9を用い,Bモード・カラードップラーで描出面を決定した後,上肢の静脈よりソナゾイドを0.015ml/kg ボーラス投与した.投与開始から30秒程度の息こらえを行い0秒から40秒間の動画を撮影・保存し,腫瘤辺縁および正常腎実質からサンプリング(範囲:直径6mm) を行いサンプリング範囲内の輝度の変化をグラフ(time intencity curve:以下TIC)を作成した.また,TICの輝度変化を⊿I・輝度がbaseからpeakになるまでの時間をTとし,正常腎実質と腫瘤の⊿I・T・⊿I/Tに有意差があるかを検討した.
【結果】
各測定値のmean±SDは,良性腫瘤:⊿I=14.08±5.91dB・T=6.18±1.51s・⊿I/T=2.44±1.31,良性腫瘤群の正常腎実質:⊿I=17.34±4.60dB・T=7.12±1.34s・⊿I/T=2.59±1.05,悪性腫瘤:⊿I= 20.57±4.64dB・T=5.87±1.98s・⊿I/T=3.94±1.70,悪性腫瘤群の正常腎実質:⊿I=12.84±4.48dB・T=6.72±2.57s・⊿I/T=2.08±0.95,であった.良性腫瘤群においては各項目とも正常腎実質との優位差を認めなかったが,悪性腫瘤群においてTでは優位差を認めなかったものの⊿Iおよび⊿I/Tでは優位差を認めた.また,腫瘤辺縁の⊿I/Tは良性腫瘤群と悪性腫瘤群で優位な差を認めた.
【考察】
良性腫瘤群においては正常腎実質との優位差は認められず,悪性腫瘤においては⊿Iおよび⊿I/Tで正常腎実質との優位差を認めたため,造影超音波検査が悪性腫瘤の鑑別に有用である可能性が示唆された.そのため,腫瘤辺縁と正常腎実質の⊿I/Tの比(腫瘤辺縁⊿I/T÷正常腎実質⊿I/T:以下M/N比)を求めることによって悪性腫瘤の鑑別が可能か検討したが,良性腫瘤の一部と悪性腫瘤の一部でM/N比が同じものがあり,造影超音波検査のみで診断することが困難な症例があった.
【結論】
考察よりソナゾイドを用いた造影超音波検査は腎腫瘤鑑別の一助となり得ることが示唆された.しかし,造影超音波検査のみでは十分に鑑別できない症例があり他の画像検査との併用は不可欠である.また,検査時には30秒程度の息こらえが必要で,小さな腫瘤の場合は検者の技量や造影面の選択など技術面での問題も見られ,TIC作成時のサンプリングの範囲やサンプリングの場所などでも結果が変動することが予測されるため詳細な条件設定も今後検討していく必要がある.