Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児心臓・血管Ⅱ

(S589)

肝腫大を伴うDown症候群の出生前マーカーとしての胎児腹腔内臍静脈瘤

Fetal intra-abdominal umbilical vein varix as a prenatal marker for Down syndrome with hepatomegaly caused by transient abnormal myelopoiesis

塩崎 有宏, 津田 さやか, 鹿児山 浩, 伊藤 実香, 鮫島 梓, 米田 徳子, 米田 哲, 斎藤 滋

Arihiro SHIOZAKI, Sayaka TSUDA, Kou KAGOYAMA, Mika ITO, Azusa SAMESHIMA, Noriko YONEDA, Satoshi YONEDA, Shigeru SAITO

富山大学附属病院産科婦人科

Obstetrics and Gynecology, Toyama University Hospital

キーワード :

【はじめに】
胎児腹腔内臍帯静脈瘤(FIUVV)は胎児腹腔内の臍帯静脈径の限局的な拡張を指す.aneuploidyのマーカーとしての報告,胎児機能不全あるいは子宮内胎児死亡といった予後不良因子としての報告があるものの,明らかな病因や臨床的意義は未だ不明である.今回我々は出生前にFIUVVと肝腫大を認めたものの,出生後にFIUVVが消失し,肝腫大の原因が一過性骨髄増殖症(TAM)であることが判明した症例を経験したので報告する.
【症例】
32歳,1回経産婦.帰省分娩のため妊娠34週5日に当科紹介受診.頻回の子宮収縮を認めたため,切迫早産の加療目的に入院となった.入院時のノンストレステストでは,基線細変動はあるものの,一過性頻脈を認めなかった.前医での経腹超音波検査で異常を指摘されていなかったが,臍帯付着部直下の胎児腹腔内臍帯静脈が球状(19.4mm×17.6mm)に拡張しており,内腔には乱流を認めたものの,血栓形成はなかった.それとは対照的に,中枢側の臍帯静脈は狭小化しており,FIUVVを疑った.また,それ以外の奇形や胸腹水は認めなかった.妊娠36週0日に施行した胎児MRIでも臍帯静脈が瘤状に拡張しており,FIUVVと確定診断された.同日夕方,基線細変動が消失し,胎児機能不全の診断で準緊急帝王切開を行った.児は2710g,男児.Apgar score 5点(1分)/7点(5分),臍帯動脈血pH 7.293,Base Excess -2.4で,呼吸障害およびダウン様顔貌のためNICU入院となった.出生後,FIUVVは消失していたが,児の白血球数は11.5万/μLと著増しており,TAMが疑われた.染色体検査では21 trisomy,遺伝子検査ではGATA1遺伝子に変異を認め,TAMと診断された.交換輸血と少量Ara-C療法により児の白血球数は減少し,日齢58日目に退院となった.
【考察】
子宮収縮に伴い羊水内圧が上昇して胎児を外から圧迫したこと,また,TAMにより肝臓が腫大することにより,肝臓周囲の臍帯静脈が圧排されることでその末梢側の臍帯静脈内で血流がうっ滞し,FIUVVを生じたものと推察された.