Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児心臓・血管Ⅱ

(S589)

胎内診断され,新生児早期より外科的介入を必要とした胎児先天性心疾患についての検討

Analysis of fetal congenital heart disease requiring surgical treatment immediately after birth diagnosed in the uterus

根木 玲子, 三好 剛一, 吉松 淳

Reiko NEKI, Takekazu MIYOSHI, Jun YOSHIMATSU

国立循環器病研究センター周産期・婦人科

Department of Perinatology and Gynecology, National Cerebral and Cardiovascular Center

キーワード :

【緒言】
胎内診断された先天性心疾患のうち,出生後の呼吸・循環動態の変化により,新生児早期より外科的介入が必要となる症例がある.胎内診断された冠動脈瘻および左心低形成症候群(HLHS)を経験したので報告する.
【症例】
症例1:32歳.1経産.家族歴:第1子が心室中隔欠損.現妊歴:自然妊娠成立.妊娠初期より他院で妊娠管理されていた.妊娠38週6日,超音波検査にて胎児心四腔断面像の異常を指摘され,同日当科紹介受診となる.推定体重:3103g.心四腔断面像では各心房・心室ともに確認.左心系に比しやや右心系が拡大.両心室よりさらに心尖部側に異常管腔構造を認めた.心胸郭比は52%と心拡大を認めた.左室流出路断面で,拡大した左冠動脈前下行枝を確認,その後心尖部まで下降し心尖部の管腔構造まで連続,さらに右心室へ血流流入を認めた.以上より,左冠動脈前下行枝-右心室の冠動脈瘻と診断.心臓以外に明らかな異常所見は認めず.出生直後の肺血管抵抗の低下により,右室圧の低下をきたし,その結果心筋虚血が生じることが危惧された.妊娠40週0日,選択的帝王切開施行.児は3564g,男児,Apgar Score 6点/6点.出生直後より啼泣あり.直ちに超音波検査施行,胎内診断同様,左冠動脈前下行枝の拡張と右心室への12mmの瘻孔を認めた.右心室は著明に拡大.出生直後より冠動脈瘻閉鎖術施行.同時に両側肺動脈絞扼術施行.術後4日目にECMO離脱,術後28日目に抜管.術後約2ヶ月で退院.
症例2:29歳,初産.家族歴:父:喉頭癌.現妊歴:自然妊娠成立.妊娠初期より他院で妊娠管理されていた.妊娠32週5日,超音波検査にて胎児HLHS が疑われ,妊娠35週1日,当科紹介受診となる.超音波では,四腔断面でhypo LVを認めるが房室間血流は左右あり.大動脈弁は3mmと狭小.血流順行性 200cm/sec.上行大動脈は狭窄後拡張あり,5.5mm.大動脈弓1.8〜2.2mmと細く,性血流.動脈管は順行性血流.卵円孔(FO)は2mm.血流はR→L.以上の所見より,hypo LV,AS,hypoplastic AoArch,FO狭小化を伴うHLHSの診断.推定体重:2550g,心血管以外の明らかな異常なし.出生後の血行動態としてPFOの血流が制限されるがBASが困難であるリスクや肺血管抵抗が高い可能性などを懸念し,妊娠38週4日,心カテ(BAS)・緊急手術(ASD creationやbil.PAB)・ECMOをスタンバイの下,選択的帝王切開術施行.2664g女児 Apgar Score 8点/8点.出生直後の心エコーで,HLHS(MS,AS),hypoplastic Ao Arch,PDA,TR tri.-sli.,PH severeと診断した.啼泣あり皮膚色良好で,人工呼吸管理下でECMOは必要とせず,カテ室でBAS施行したが,心房中隔は著明に肥厚,ワイヤーは通過するもカテーテルは通過できず.同日,両側肺動脈絞扼術,ASD creation施行し経過観察とした.
【結語】
出生直後より外科的介入を必要とした,胎児先天性心疾患2症例を経験した.胎内診断により,出生直後の血行動態を推測し,的確な処置を施すにあたって,超音波による胎内診断が有用であった症例と考える.