中田 雅彦¹, 平田 博子², 鷹野 真由実², 中川 達史², 平林 啓², 沼 文隆², 砂坂 京代³, 笠原 英司⁴, 村下 賢⁴

Masahiko NAKATA¹, Hiroko HIRATA², Mayumi TAKANO², Tatsushi NAKAGAWA², Kei HIRABAYASHI², Fumitaka NUMA², Takayo SUNASAKA³, Eiji KASAHARA⁴, Masaru MURASHITA⁴

¹徳山中央病院周産期母子医療センター, ²徳山中央病院産婦人科, ³徳山中央病院検査部, ⁴日立アロカメディカル第一メディカルシステム技術本部

¹Perinatal Care Center, Tokuyama Central Hospital, ²Department of Obstetrics and Gynecology, Tokuyama Central Hospital, ³Clinical Laboratory, Tokuyama Central Hospital, ⁴Medical System Engineering Division I, Hitachi Aloka Medical, Ltd.

キーワード :

【目的】
2Dトラッキング（2DT）法による胎児心房心室壁運動の経時的計測を行い従来のM-mode法やpulsed Doppler法を用いない新たな計測法の信頼性と妥当性を検証すること．
【方法】
単胎正常胎児を対象とし，胎児心四腔断面のB-mode断層像を動画で記録し，得られた動画の心房・心室壁に関心領域（ROI）を設定した．胎児心拍数に適応するためにflame rateは60Hz以上に設定し，可能な限り強拡で胎児心臓を撮像した． ROIの位置変化を自己相関によるパターンマッチングで追尾し，房室壁の運動を捉えた．各壁運動の速度変化より房室壁の収縮開始時点を求め，房室伝導時間を算出した．同時にpulsed Doppler法を用いたSVC-AAo法による房室伝導時間を計測し両者の相関を検討した．尚，一胎児に対して一回の計測値を求めた．
【結果】
妊娠18.4週から40.4週までの45例の胎児について計測が可能だった．2DT法による房室伝導計測の検者間誤差は7.0％（1.2-13.1％），測定間誤差は7.8％（2.9-13.9％）だった．得られた房室伝導時間は112±13msecで，SVC-AAo法での時間は114±114msecであり，両者の相関は，相関係数0.93で有意な相関を示していた（p＜0.001）．
【結論】
新たに開発した自己相関法による2DT法はB-mode画像のみで胎児心臓の壁運動を解析できることが可能で，房室伝導時間の計測で汎用されているpulsed Doppler法での計測と極めて高い相関を示していた．2DT法は血流計測が不要で角度依存がなく簡便に動画を記録できることが利点であり，今後胎児不整脈診断等の胎児心機能解析の新たな手技となる可能性があると思われた．