田中 梨絵, 南 康範, 田北 雅弘, 北井 聡, 井上 達夫, 矢田 典久, 萩原 智, 上嶋 一臣, 西田 直匡志, 工藤 正俊

Rie TANAKA, Yasunori MINAMI, Masahiro TAKITA, Satoshi KITAI, Tatuo INOUE, Norihisa YADA, Satoshi HAGIWARA, Kazuomi UESHIMA, Naoshi NISHIDA, Masatoshi KUDO

近畿大学医学部消化器内科

Gastroenterology and Hepatology, Kinki University Hospital

キーワード :

【はじめに】
肝血管筋脂肪腫（angiomyolipoma:AML）は，比較的稀な良性間葉系腫瘍である．今回，我々は肝血管筋脂肪腫と診断された3症例を経験したので，若干の文献的考察を加えて報告する．
【方法】
造影CTやMRI，超音波検査および病理検査にて肝AMLと診断した3症例である．2例はスクリーニングの超音波検査にて肝腫瘤を指摘された．いずれも造影CTやMRI検査では早期相でhyper vascularな腫瘤であった．ソナゾイド造影超音波検査でもhyper vascularであり，内部にhigh〜low echoが混在していることからAMLが疑われたが，肝細胞癌の可能性も否定できなかった．そのため，1例は肝生検を施行し，もう1例は背部痛を認めたため腹腔鏡下肝切除術を施行した．病理所見ではいずれもHMB-45陽性であり，AMLと診断した．1例は20代の女性．結節性硬化症と両腎の血管筋脂肪腫のフォロー中にMRIにて低吸収な肝内腫瘤を指摘された．ソナゾイド造影超音波検査ではいずれもearly vascular phaseではhypervascularであり，late〜post vascular phaseでは部分的にdefectで染影の持続が見られ，AMLと診断し経過観察中である．
【結果】
腫瘤の血流はすべての症例で比較的豊富であり，ソナゾイド造影超音波検査で肝静脈への流入が確認できたのは2例であった．2例は画像検査上，肝細胞癌を否定できないため切除や生検を要した．
【考察】
肝血管筋脂肪腫は血管，平滑筋および脂肪の3成分で構成され，画像所見は極めて多彩であり，悪性腫瘍，特に肝細胞癌との鑑別に苦慮することがしばしばある．特に脂肪成分に富むものでは脂肪を含む高分化型の肝細胞癌の可能性を除外できず，切除せざるを得ない症例も少なくない．しかし，確定診断に至れば経過観察が可能であり，背景が正常肝で腫瘍発生の危険因子に乏しい症例では肝血管筋脂肪腫も念頭に精査する必要があると考えた．