Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:びまん性肝疾患Ⅱ

(S571)

慢性心不全急性増悪の治療前後で肝実質灌流動態および肝硬度変化を観察できた1症例

A case report:VTTQ and CEUS findings of the liver in patient with congestive heart disease

工藤 岳秀1, 丸山 憲一1, 松清 靖2, 小林 康次郎2, 住野 泰清2

Takahide KUDO1, Kenichi MARUYAMA1, Yasushi MATUKIYO2, Koujiro KOBAYASHI2, Yasukiyo SUMINO2

1東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, 2東邦大学医療センター大森病院消化器センター内科

1Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center Omori Hospital, 2Department of Gastroenterology and Hepatology, Toho University Medical Center Omori Hospital

キーワード :

Fibroscanをはじめとする肝硬度測定法は,慢性肝疾患のステージ分類などに広く応用されるようになったが,その測定値には線維化だけでなく,炎症や脂肪化などいくつかの因子が関与している可能性がある.今回我々は,強い肝鬱血が硬度を大きく変化させたと考えられる興味ある1例を経験したので報告する.
【症例】
呼吸苦・胸内苦悶感を訴え来院した58歳の男性.バセドウ病,心房細動,慢性心不全で当院に通院中であったが,服薬を自己中断していたところ,本年10月頃から労作時呼吸苦が出現.徐々に増悪し安静仰臥が困難となったため救急車で搬送・入院した.胸部エックス線写真では心拡大著明で,UCGではEF 40%,diffuse hypokinesis,中等度〜高度のTRあり,IVC径31mmと著明な右心負荷を認めた.同日施行した腹部超音波検査では,肝静脈の著明な拡張,呼吸性径変動なく,少量の腹水あり,FFT解析では心拍動が門脈にまで波及しており,肝動脈のRI値上昇,造影超音波ではソナゾイドが右房に流入せず肝静脈に逆流停滞するなど著明な鬱血肝の所見が認められた.このときのVTTQ Vs値は2.80であった.入院後,利尿剤などで速やかに治療され,症状症候は著明に改善.第16病日に再度超音波検査を施行したところ,鬱血所見は認められず,ソナゾイドの肝静脈内停滞もなく,FFT解析では門脈は定常流に戻っていた.VTTQを測定したところ,Vs値は1.69に低下していた.
【まとめ】
本例は鬱血性心不全における肝実質灌流動態の経過を造影超音波で観察できた興味ある1例であると同時に,鬱血が肝の硬度,剪断波伝搬速度に影響することを示唆する貴重な症例であると考え詳細を提示する.なお鬱血が改善したあとのVTTQ値は1.69であったが,健常肝と比較すると多少高値である.これは慢性心不全による中心静脈周辺の線維化によるものと考えている.