古市 好宏¹, 森安 史典², 新戸 禎哲¹, 澤田 孝繁¹, 松浦 直孝¹, 平良 淳一², 佐野 隆友², 杉本 勝俊², 今井 康晴²

Yoshihiro FURUICHI¹, Fuminori MORIYASU², Teitetsu NIIDO¹, Takashige SAWADA¹, Naotaka MATSUURA¹, Junichi TAIRA², Takatomo SANO², Katsutoshi SUGIMOTO², Yasuharu IMAI²

¹新座志木中央総合病院内科, ²東京医科大学消化器内科

¹Internal Medicine, Niizashiki Central General Hospital, ²Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

【諸言】
超音波造影剤（Sonazoid）は肝内のKupffer細胞で貪食される．貪食を免れた造影剤は肝静脈（HV）へと流出し，HV内腔が染影される．
【目的】
孤立性胃静脈瘤（GV）を発症した肝硬変（LC）に対しB-RTOがもたらす肝内変化を，HVの超音波造影剤到達時間と輝度計測により解明する．
【対象と方法】
対象はLC群17例と正常群NC10例である．GVを発症したLC群とNC群について，HV超音波造影剤到達時間と輝度を前向きに測定し検討した．次に，B-RTOによるGV治療で，この到達時間とHV輝度が変化するか検討した．超音波診断装置AplioXGTMを用い，Sonazoidを0.015mL/kgの速度で肘静脈より投与し60秒間撮影した．MI値0.19−0.21，dynamic range 50，Gain 75，Focus 7−9 cmに設定した．解析にはImageLab4.11を使用し，HVのTime Intensity Curveを計測した上，到達時間と最大輝度を算出した（単位linear scale）．
【結果】
B-RTOによりGVは全例で消失した．HV造影剤到達時間中央値は，治療前LC群：21.0（11.0−33.0）秒，NC群：40.0（38.0−45.0）秒で，LC群の方がNC群より短縮していた（p＝0.0006，Mann-Whitney U test）．しかし，B-RTO一週間後にはLC群の到達時間が延長（中央値25.0，18.0−38.0秒，p＝0.0002，Wilcoxon符号付順位検定）し，NC群へ近づいた．また，HVの最大輝度中央値については，治療前LC群：7201（43−26751），NC群：1236（296−8794）で，LC群の方がNC群より高値であった（p＝0.037，Mann-Whitney U test）．しかし，B-RTO一週間後にはLC群のHV輝度が，1377（32−17801）まで低下（p＝0.0009，Wilcoxon符号付順位検定）し，NC群に近づいた．また肝機能検査値は，Ch-Eが2248→3860（p＜0.001），NH3が85→57（p＜0.01）ICGR15が33.2→20.5（p＜0.001）に改善していた（Wilcoxon符号付順位検定）．
【考察】
GVを発症したLCでは，HVにおける超音波造影剤到達時間が短縮し，最大輝度は上昇していた．しかし，B-RTOによりGVを閉塞することで，到達時間は延長し，輝度は低下した（正常例へと近づいた）．これは，B-RTOによる有効門脈血流改善の結果，肝内Kupffer細胞機能と貪食能が上昇し，HVへ流出する造影剤が減少したためだと考えられた．これらの計測は，B-RTOがもたらす肝内変化を解明するのに重要であると思われた．