Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:肝:治療効果判定Ⅱ

(S562)

造影超音波を用いた進行肝細胞癌に対するソラフェニブの早期治療評価について

Evaluation of sorafenib for hepatocellular carcinoma by contrast-enhanced ultrasonography

塩澤 一恵1, 渡邉 学1, 松清 靖1, 池原 孝1, 石井 耕司1, 工藤 岳秀2, 丸山 憲一2, 住野 泰清1

Kazue SHIOZAWA1, Manabu WATANABE1, Yasushi MATSUKIYO1, Takashi IKEHARA1, Koji ISHII1, Takahide KUDO2, Kenichi MARUYAMA2, Yasukiyo SUMINO1

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部

1Division of Gastroenterology and hepatology, Toho University Medical Center, Omori Hospital, 2Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center, Omori Hospital

キーワード :

【目的】
ソラフェニブは重篤な合併症を認めることがあり,また高価な薬剤であることから,その治療継続について早期の治療評価が重要であると思われる.これまでわれわれは,進行肝細胞癌(HCC)に対するソラフェニブの早期治療評価におけるソナゾイド造影超音波(CEUS)による到達時間parametric imaging(AtPI)の有用性について報告してきた(第39回日本肝臓学会東部会など).今回,AtPIにより得られた客観的評価の指標であるmean time(MT)がその早期治療評価に有用であるか検討した.
【対象と方法】
2009年4月〜2012年9月までの間に当院でソラフェニブ治療を開始した進行HCC症例75例のうち,ソラフェニブを2週間以上内服し,内服前および内服2週後にCEUSを施行することができた46例を対象とした.男性42例,女性4例,平均年齢70歳,背景肝はHBV7例,HCV28例,アルコール8例,その他3例,Child-pugh分類Aが41例,Bが5例,ソラフェニブ初回投与量は800mg/日が4例,400mg/日が31例,200mg/日が11例.肝癌診療ガイドラインに基づき,dynamic CTまたは腹部血管撮影所見にてHCC4個以上またはVp2以上の門脈腫瘍塞栓(PVTT)を認めた症例を進行HCCとした.評価を一定とするためにUSにて一定期間の経過観察が可能な一結節またはPVTTを対象としてソラフェニブ投与前,投与2週後に同じ撮像条件でCEUSを施行した.血管相(0〜40秒)を動画で保存し,off-lineでAtPIによる解析を行なった.対象とした腫瘍またはPVTT近傍にある太い動脈に造影剤が到達した時点を基準点とし,基準点から対象までの造影剤到達時間を0.5秒間隔に設定してcolor mapping(CM)画像を作成した.得られたCM画像において,基準点から対象内の造影剤到達時間の平均値(MT)を算出,治療前のMTを前値とし,治療2週後におけるMTの各々の差を求め,差が0以上となった症例をMT(+)群,差が0未満となった症例をMT(-)群と判断した.各群の背景を統計学的に比較検討し,またKaplan-Meire法により各群の生存期間を検討した.生存曲線の作成にはソラフェニブ内服開始した日を基準とした.なお本検討は当院の倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
全46例中,MT(+)は26例,MT(-)は20例であった.生存期間の中央値はMT(+)群が352日,MT(-)群が259日,p=0.022で,MT(+)群で有意に生存期間の延長を認めた.
【結語】
AtPIで得られたMTの変化を検討することは,進行HCCに対するソラフェニブの早期治療効果判定に有用である可能性が示唆された.特に治療2週後という早い段階で治療評価ができる可能性があり,MTはソラフェニブ継続のよい指標となるのではないかと考えられた.