吉田 昌弘¹, 田中 弘教^{1, 2}, 西村 純子¹, 高嶋 智之², 會澤 信弘², 齋藤 正紀², 廣田 誠一³, 藤元 治朗⁴, 西口 修平², 飯島 尋子^{1, 2}

Masahiro YOSHIDA¹, Hironori TANAKA^{1, 2}, Junko NISHIMURA¹, Tomoyuki TAKASHIMA², Nobuhiro AIZAWA², Masaki SAITO², Seiichi HIROTA³, Jiro FUJIMOTO⁴, Shuhei NISHIGUCHI², Hiroko IIJIMA^{1, 2}

¹兵庫医科大学超音波センター, ²兵庫医科大学内科・肝胆膵科, ³兵庫医科大学病院病理部, ⁴兵庫医科大学肝胆膵外科

¹Depertment of Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, ²Depertment of Internal Medicine, Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo College of Medicine, ³Depertment of Surgical Pathology, Hyogo College of Medicine, ⁴Depertment of Surgery, Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【目的】
非アルコール性脂肪肝炎（non‐alcohoic steatohepatitis: NASH）は進行すると肝硬変や肝癌となる可能性のある疾患であり，Non alcoholic fatty liver disease（NAFLD）から早期に拾い上げることが重要である．NASHの確定診断は，肝生検による組織診断が必要であるが侵襲性などから非侵襲的診断法が望まれる．最近肝硬度を用いたNASH診断の試みが報告されている（Palmeri etal.2011 J Hepatol. 666-672），今回我々も，Virtual Touch Tissue Quantification （VTTQ）によるNASH診断の有用性を検討した．
【方法】
2008年10月から2012年10月までに当院でVTTQを施行し肝生検で組織学的に診断された慢性肝疾患患者878例中，38例のNAFLD患者（単純性脂肪肝5例，NASH33例：男性23例，女性15例，平均年齢　48歳）を対象とした．NASHの病理診断はBruntの分類を用いた．NASHにおける肝硬度をVTTQを用いてVs値を測定し，単純性脂肪肝（SS）との比較，臨床パラメータと相関の検討を行った．VTTQの測定はACUSON S2000（持田シーメンス社製）を使用した．VTTQの測定は右肋間で肝表より約1cmにROIの上端を設定し，安定して測定できた5回のVs値の平均値を測定結果とした．US B-modeによる脂肪化の程度をエコー深部減衰の程度により軽度，中度，高度に分離した．本検討は院内倫理委員会の承諾を得ている．
【結果】
NASH33例のStageとGradeはそれぞれ，Stgae1：3例，Stgae2：17例，Stgae3：9例，Stgae4：4例，Grade1：1例，Grade2：11例，Grade3：21例であった．SSとNASHの各臨床パラメータについて検討するとそれぞれ，年齢（40.0±9.9，49.7±14.1），男女比（40％:60％，64％:36％），Vs値（1.05±0.13，1.45±0.58），BMI（28.0±3.9，27.3±4.3），T-Cho（198±39，177±39），TG（100±46，166±18），AST/ALT（0.67±0.25，0.78±0.34）でいずれも有意差を認めなかった．NASHの各線維化ステージのVs値（m/s）の平均値は，SSの1.04±0.13に対して，Stage1：1.13±0.02，Stage 2：1.17±0.18，Stage 3：1.68±0.62，Stage 4：2.38±0.70と線維化stageの進行に伴いVs値は上昇する傾向がみられ，Stgae2とStgae3（P=0.027），Stgae3とStgae4（P=0.045）の間に有意差を認めた．線維化stage3以上のNASH with sever fibrosisとの鑑別能をSSを含めてROC解析より検討したところ，曲線下面積は0.862と良好な判別能を示した．ROC解析より求めたCut off値は1.38であり，この時の感度は77％，特異度は96％であった．Grade別にみると，grade1：1.14，grade2：1.1.48±0.58，grade：3.1.45±0.60であり有意差を認めなかった．Vs値と臨床パラメータとの検討では脂肪化（軽度：1.72±0.80，中度：1.49±0.66，高度：1.31±0.38），BMI（25未満：1.50±0.57，20以上30未満：1.46±0.61，30以上：1.37±0.60），AST（40未満：1.39±0.57，40以上80未満1.46±0.60，80以上1.54±0.62），ALT（40未満：1.78±0.79，40以上80未満1.30±0.47，80以上1.49±0.59）と，すべての群間に有意差を認めなかった．
【結語】
NASHにおいても肝線維stageの進行に伴いVs値は上昇し，VTTQはNASHの肝線維化の評価に有用であった．