Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:膵:超音波内視鏡・他

(S556)

膵退形成癌の7病変の検討

Ultrasonographic findings of Anaplastic Carcinoma of the Pancreas

中島 幸恵1, 木村 裕美1, 蓮尾 茂幸1, 宮越 基1, 小林 幸子1, 伊藤 智栄1, 橋本 碧1, 武田 昌基1, 竹内 豊1, 水口 安則2

Yukie NAKAJIMA1, Hiromi KIMURA1, Shigeyuki HASUO1, Motoi MIYAKOSHI1, Sachiko KOBAYASHI1, Tomoe ITO1, Midori HASHIMOTO1, Masaki TAKEDA1, Yutaka TAKEUCHI1, Yasunori MIZUGUCHI2

1独立行政法人国立がん研究センター中央病院病理科・臨床検査科, 2独立行政法人国立がん研究センター中央病院放射線診断科

1Clinical Laboratory, National Cancer Center Hospital, 2Diagnostic Radiology, National Cancer Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
膵退形成癌は膵癌取り扱い規約第6版1)にて浸潤性膵管癌の一組織型に分類される.「膵癌登録報告2007」2)によれば,通常型浸潤性膵管癌の0.1%と報告され,非常に稀な腫瘍である.今回,我々は病理組織学的に確定診断された膵退形成癌の7病変を経験したので超音波所見を報告する.
【対象と方法】
2003年12月〜2011年11月の期間に,当院検査室において腹部超音波検査を施行後,病理組織学的に膵退形成癌と診断された7症例7病変を対象とした.年齢は50歳代〜70歳代(平均65.7歳),男女比は5:2であった.超音波診断装置は,東芝メディカルシステムズ社製AplioとAplio XGを使用した.3病変においてレボビストによる造影検査を施行した.
【結果】
(超音波所見)腫瘍の大きさは22mm〜77mm大(平均56.7mm大),存在部位は膵頭部4病変,膵体部1病変,膵体尾部2病変であった.形状はおおむね球形2病変,類球形2病変,分葉形1病変,不整形2病変.全病変境界明瞭,輪郭整5病変,不整2病変を示した.内部エコーは,膵実質と比較し不均一エコー5病変,低エコー2病変,を示した.2病変において嚢胞状成分を伴っていた.5病変にて腫瘍尾側の主膵管拡張を認めた.膵頭部に存在した1病変のみ拡張なく,1病変は観察困難であった.造影超音波を施行した3病変中2病変は,いずれも一部を除き,腫瘍全体の不均一な造影効果を示した.残り1病変は,早期相で辺縁優位に造影効果を示し,全体では乏血性であった.(病理組織所見)7例中6例は切除され,1例は生検のみであった.切除術式は,幽門輪温存膵頭十二指腸切除2例,膵頭十二指腸切除1例,体尾部切除3例であった.全病変の割面は,境界明瞭を示し,間質や繊維増生がほとんどなく,圧排性,髄様に増殖する結節型腫瘍であった.腫瘍径の大きいものが多く,内部は広範な壊死や出血を伴っていた.切除された腫瘍の尾側主膵管は1病変を除き6病変で拡張していた.
【考察とまとめ】
膵退形成癌の自験例7病変の超音波像について検討した.不整形を示す2病変を除き,5病変において,おおむね球形または類球形または分葉形を示し,丸くまとまった腫瘍であった.全病変で境界明瞭を示し,多くは輪郭整を示した.間質や繊維増生がほとんどなく,肉腫様に圧排性に増殖する性質を反映していているものと考えた.腫瘍径の大きいものが多く,全例で内部に広範な壊死や出血を伴い,内部エコーは多彩な像を示した.尾側主膵管は通常型浸潤性膵管癌と同様に,ほとんどの症例で拡張していた.今回経験した多くの症例の形状は,通常の浸潤性膵管癌とは異なり,輪郭不整像を示さず,丸くまとまっている事が多く,神経内分泌腫瘍などとの鑑別に苦慮する.しかし,ほとんどの症例で尾側主膵管拡張を伴っていた.これらの所見を考慮すれば膵退形成癌を鑑別診断に挙げることは可能と考える.膵退形成癌は急速に成長する腫瘍であり,予後不良である.本症例に遭遇した場合には,膵退形成癌の可能性を念頭に置き,速やかでかつ慎重な診断を進める必要があると考える.
【参考文献】
1)日本膵臓学会編:膵癌取り扱い規約,第6版,金原出版,東京,2009
2)日本膵臓学会:膵癌登録報告2007