会澤 信弘¹, 飯島 尋子^{1, 2}, 吉田 昌弘², 楊 和典¹, 高嶋 智之¹, 池田 直人¹, 田中 弘教^{1, 2}, 齋藤 正紀¹, 西口 修平¹

Nobuhiro AIZAWA¹, Hiroko IIJIMA^{1, 2}, Masahiro YOSHIDA², Kazunori YOH¹, Tomoyuki TAKASIMA¹, Naoto IKEDA¹, Hironori TANAKA^{1, 2}, Masaki SAITO¹, Shuhei NISHIGUCHI¹

¹兵庫医科大学肝胆膵内科, ²兵庫医科大学超音波センター

¹Division of Hepatobiliary and Pancreatic Diseases, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine, ²Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【目的】
近年，慢性肝疾患症例の肝線維化の診断に，非観血的で侵襲の少ないARFI（Acoustic Radiation Force Impulse）の臨床応用が注目され，その有用性について報告されている．VTTQ（Virtual TouchTissue Quantification）は，音響放射圧によって生じた剪断ひずみが，剪断弾性波（shear wave）として伝搬する速度を測ることによって，組織の硬度を測定できる新しい手法である．数値でその硬さを定量化することができるため，慢性肝疾患の線維化診断に用いられている．しかしながら，急性肝障害に対して臨床的に用いた報告はみられない．今回，急性肝障害症例に対してARFIを用いてshear wave伝搬速度を測定し，臨床経過とあわせて検討し測定の意義について検討した．
【方法】
2010年2月から2012年10月までの間に当院に入院した急性肝障害患者のうち，経過中に3回以上VTTQを用いて肝硬度を測定した患者17症例（平均年齢45.0±19.1歳，男性9例，女性8例，HBV：7例，HCV：1例，EBV：2例，自己免疫性：4例，薬物性：3例）を対象とした．VTTQを用いて経時的に肝硬度（Vs値; m/s）の測定を行い肝機能と比較した．肝障害極期：ALT最高値，肝障害回復期：ALT最高値の50％以下，肝障害治癒期：ALT正常化または最低値として肝硬度の推移を検討した．超音波装置はACUSON S2000（持田シーメンス社）を使用した．剪断弾性波（Vs値;m/s）は右肋間より5回測定した平均値を測定結果とした．
【結果】
急性肝障害極期のVs値，T-Bil，AST，ALT値はそれぞれ1.65±0.52.m/s，7.0±5.6mg/dl，892.0±490.8U/l，1325.0±649.1U/l であった．すべての症例で肝機能は改善を認め，肝障害回復期，肝障害治癒期のVs値は1.66±0.47.m/s，1.29±0.46.m/sと，Vs値は肝機能改善と共に低下を認めた．また，Vs値の低下は肝機能の改善よりもやや遅れる傾向であった．T-Bilが高値である症例は，炎症ピーク時のVs値が高い傾向を認めており，肝炎が重症ではVs値が高くなる可能性が考えられた．今回の検討では，重症例は含まれていないが，今後重症例も含めた検討も必要と考えられる．
【結語】
急性肝障害では，炎症の極期にはVs値が高く，肝炎の沈静化に伴いVs値が低下した．VTTQによる肝硬度測定は肝炎の強い炎症に影響されることが示された．