Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:人間ドック

(S552)

一般健康診断で認められる肝門部リンパ節腫大の臨床的意義

Perihepatic lymph node enlargement observed at a general health examination

後藤 寛昭1, 榎奥 健一郎1, 2, 疋田 宏美1, 鈴木 淳史1, 岩井 友美1, 横田 浩充1, 山崎 力3, 矢冨 裕1, 池田 均1, 2

Hiroaki GOTOH1, Kenichirou ENOOKU1, 2, Hiromi HIKITA1, Atsushi SUZUKI1, Tomomi IWAI1, Hiromitsu YOKOTA1, Tsutomu YAMAZAKI3, Yutaka YATOMI1, Hitoshi IKEDA1, 2

1東京大学医学部附属病院検査部, 2東京大学医学部附属病院消化器内科, 3東京大学医学部附属病院臨床研究支援センター

1Department of Clinical Laboratory Medicine, The University of Tokyo Hospital, 2Department of Gastroenterology, The University of Tokyo, 3Center for Epidemiology & Preventive Medicine, The University of Tokyo Hospital

キーワード :

【目的】
肝門部リンパ節の腫大は慢性肝疾患,特に慢性C型肝炎患者に多く認められることが知られているが,一般的な健康診断においても時折見つけることが出来る.そこで我々は,東京大学医学部附属病院健康診断受診者の腹部超音波検査における腹腔内リンパ節,特に肝門部リンパ節腫大例の頻度,臨床的意義を明確にすることを目指した.
【対象・方法】
2008年1月から2011年12月の期間中に,当院の検診部を受診し腹部超音波検査を施行した7259症例を対象とし,その4年間のうちに繰り返し受診した症例を除いた4234例(女性1951名,男性2283名)を肝門部リンパ節腫大の検討対象とした.超音波検査は東芝社製Xario SSA-660Aを用いて7人の超音波検査士(消化器領域)で施行した.本検討は東京大学医学部研究倫理審査委員会の承認の下に行った.
【結果】
腹部超音波検査にて認識された肝門部周囲のリンパ節の大きさは,ほとんど(96%)が10mm以上であり,長軸の最小が8.5mm,最大で32mmだった.肝門部リンパ節腫大は4234例中の69例(1.6%)で認められた.そのうち17例(0.4%)は慢性肝障害,13例(0.3%)は悪性腫瘍の合併を認めた.その中の1例でアルコール性肝障害からの肝細胞癌発症があった.慢性肝障害に関連したリンパ節腫大17症例のうち11例(64.7%)でHCV抗体陽性,そのうち8例はALT値が40 U/L未満だった.悪性腫瘍に関連した肝門部リンパ節腫大13例中8例に傍大動脈リンパ節の腫大が認められた.原因不明の肝門部リンパ節腫大40例のうち,27例は平均2.08年間追跡することができたが,大きさの変化は殆どなく新出疾患も認めなかった.
【結論】
一般的な集団における肝門部リンパ節の検出率は,慢性肝疾患,特にHCV感染症の罹患率によって異なると考えられた.肝門部リンパ節腫大が観察された場合は,血清ALT値が正常範囲であったとしても,まずHCV感染症を含む肝臓疾患を念頭に検査するべきである.また,大動脈周囲リンパ節腫大を伴う肝門部リンパ節腫大は悪性病変を暗示しているので注意が必要である.原因不明の肝門部リンパ節腫大の遭遇率は一般集団の約1%であり,経過観察において大きな変化もないことが多いと考えられる.