Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:消化器・その他

(S547)

超音波を施行した0歳児の嘔吐症例の検討

Examination of abdominal ultrasonography for vomitting 0 year old babies

前野 知子1, 横川 美加1, 辻 裕美子1, 塩見 香織1, 前川 清1, 井上 達夫2, 南 康範2, 西田 直生志2, 八木 誠3, 工藤 正俊2

Tomoko MAENO1, Mika YOKOGAWA1, Yumiko TSUJI1, Kaori SHIOMI1, Kiyoshi MAEGAWA1, Tatsuo INOUE2, Yasunori MINAMI2, Naoshi NISHIDA2, Makoto YAGI3, Masatoshi KUDO2

1近畿大学医学部附属病院中央超音波診断・治療室, 2近畿大学医学部消化器内科, 3近畿大学医学小児外科

1Division of Ultrasound Diagnosis and Treatment, Kinki University Hospital Faculty of Medicine, 2Department of Gastroenterology and Hepatology, Kinki University Hospital Faculty of Medicine, 3Department of Surgery, Kinki University Hospital Faculty of Medicine

キーワード :

【はじめに】
小児領域では,安全で侵襲性の低い超音波検査が広く画像診断として用いられている.当院における小児(0〜15歳)の超音波依頼件数は年々増加し,近年では年間,約750例に達しており,特に成人に比べ緊急依頼が37.3%と多い.なかでも,0歳児の検査依頼は小児全体の17.4%と最も多く,緊急依頼も46.2%と最も高い.今回我々は,緊急依頼の多い0歳児の嘔吐症例について検討し,若干の知見を得たので報告する.
【対象】
2008年4月から2012年11月(4年8ヶ月間)に実施した0歳から15歳の超音波検査3,077症例のうち,0歳児で主訴が嘔吐であった61症例について検討した.男女比は33:28,月齢は0ヶ月10症例,1ヶ月24症例,2ヶ月13症例,3ヶ月4症例,4ヶ月1症例,5ヶ月4症例,6ヶ月2症例,7ヶ月1症例,8ヶ月1症例,9ヶ月0症例,10ヶ月0症例,11ヶ月1症例,平均2.0ヶ月であった.
【結果】
61症例中23症例(37.7%)は原因不明であり,超音波検査でも明らかな異常は認めなかった.超音波検査で診断し得たものは13症例(21.3%)で,肥厚性幽門狭窄症が8症例,腸回転異常症が2症例,腸重積が2症例,先天性胆道拡張症が1症例であった.超音波検査で診断には至らなかったが間接的所見のあったものは6症例(9.8%)で,胃軸捻転や胎便栓症候群によるイレウス,便秘,ロタウイルス腸炎などであった.一方,臨床的に診断し得た,または疑えた症例のうち超音波検査で異常を指摘できなかった症例は19症例(31.1%)で,胃軸捻転が6症例,胃食道逆流症が3症例,呑気症が3症例,ゲップ不良が2症例,喉頭軟化症が2症例,十二指腸狭窄が1症例,便秘が1症例,食物アレルギーが1症例であった.また,疾患別に月齢を見ると,腸回転異常症,先天性胆道拡張症,胎便栓症候群によるイレウスは平均0ヶ月でいずれも生後1週間以内であった.呑気症は0.7ヶ月,肥厚性幽門狭窄症は1.6ヶ月,胃軸捻転は平均1.7ヶ月であった.それに対し,胃食道逆流症は5.3ヶ月,腸重積は8.5ヶ月と月例が高い傾向にあった.
【考察】
噴水状嘔吐を呈した症例中3症例と,血性嘔吐を呈した2症例は肥厚性幽門狭窄症であり,これらを含む肥厚性幽門狭窄症8症例全てを超音波検査で診断し得た.胆汁性嘔吐を認めたものは4症例あり,腸回転異常症(2症例),先天性胆道拡張症(1症例),胎便栓症候群によるイレウス(1症例)といずれも緊急を要する疾患であった.患者本人の訴えが乏しい0歳児では,医師や家族からの情報が有用であった.一方で,臨床的に診断し得た,または疑えた症例のうち,半数は超音波検査で異常を指摘できなかった.胃軸捻転や胃食道逆流症など,超音波検査のみでは診断が困難な疾患の存在も考慮し,超音波検査のみに固執することなく,他検査へと促すことも必要と考える.0歳児において,簡便で安全な超音波検査は有用であるが,他の年齢層では見られない疾患も多く,また月齢の違いでも疾患が異なるため,小児特有の疾患について知識を習得し,検査を施行することが重要であると考える.