Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:脾臓

(S541)

脾静脈逆流をきたす膵疾患とは

Pancreatic diseases which cause splenic venous reflux

阪上 順一1, 保田 宏明1, 十亀 義生1, 福田 亘1, 光吉 博則1, 鈴木 教久1, 片岡 慶正2

Junichi SAKAGAMI1, Hiroaki YASUDA1, Yoshio SOGAME1, Wataru FUKUDA1, Hironori MITSUYOSHI1, Norihisa SUZUKI1, Keisho KATAOKA2

1京都府立医科大学消化器内科, 2大津市民病院

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Kyoto Prefectural University of Medicine, 2Otsu Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
門脈血行逆流はアルコール性肝硬変に多くみられるとされる.また,脾静脈の逆流を呈する症例の多くも肝硬変症例であり,その排血路の多くは脾腎シャントであると報告されている.(平田真美,ほか:アルコールと医学生物学 23:171-174,2003)(川崎俊彦,ほか.:日消誌 84(8):1655-1660,1987)(隆元英,ほか:肝臓 23(10):1150-1157,1982)(中島俊之,ほか.消化器内視鏡の進歩. 48:138-139,1996)
【目的】
脾静脈逆流症例の内訳の把握,消化器系有病者に占める脾静脈逆流の発見率の確認,膵疾患での脾静脈逆流症例の検討,を目的とした.
【対象と方法】
腹部超音波検査をうけた症例から,脾静脈がBモードで明瞭に観察でき,脾静脈血流を測定できた連続1,000人を抽出した.脾静脈のVmax,CSAから脾静脈血流を計算した.次に,症例を現在までに脾静脈がBモードで明瞭に観察でき,脾静脈血流を測定できた全症例3045人に拡大し検討を加えた.測定は早朝空腹時に行い,測定機器は,AplioXG, Xario, Viamo, SSD2000, SSD6500, EUB8500, EUB5500,α7, α10, F75, Logiq400, Logiq e, Logiq7のいずれかを用いた.
【成績】
先行1,000人の検討では脾静脈逆流は18人に認められ,アルコール性肝硬変のみならず他の成因の肝硬変にも認められた.また,膵疾患にも少なからず認められる現象であることが示唆された.膵疾患による脾静脈逆流量は,肝疾患によるものより有意に低値であった.全例調査を加味した結果,脾静脈逆流症例は消化器系有病者の1.3〜1.8%に存在した.脾静脈逆流症例をみた場合,肝疾患(68.3%)以外では膵疾患が多かった(19.5%).脾静脈逆流を来す膵疾患は,膵癌,慢性膵炎,自己免疫性膵炎であり,急性膵炎症例はみられなかった.自己免疫性膵炎ではステロイド治療で脾静脈逆流が順行性に復していた.
【結論】
脾静脈逆流を来す膵疾患には膵癌,慢性膵炎,自己免疫性膵炎があげられるが,急性膵炎では稀であろうと考えられた.