Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:胆のうⅠ

(S539)

良性有茎性胆嚢ポリープの3手術例の検討

Case report of 3 pedunculated benign gallblader polyps

新井 悠太1, 荒井 健一1, 松本 沙知子1, 北條 里枝1, 本間 善之1, 北浦 幸一1, 若杉 聡2, 加納 宣康3, 星 和栄4, 石田 秀明5

Yuta ARAI1, Kenichi ARAI1, Sachiko MATHUMOTO1, Rie HOJYO1, Yoshiyuki HONMA1, Koichi KITAURA1, Satoshi WAKASUGI2, Nobuyasu KANOU3, Kazuei HOSHI4, Hideaki ISHIDA5

1亀田総合病院超音波検査室, 2亀田総合病院消化器診断科, 3亀田総合病院外科, 4亀田総合病院病理科, 5秋田赤十字病院秋田赤十字病院超音波センター

1Division of Ultrasonographic examination, Kameda Medical Center Hospital, 2Division of Digestive Diagnosis Department of Internal Medicine, Kameda Medical Center Hospital, 3Division of General Surgery Department of Surgery, Kameda Medical Center Hospital, 4Department of Anatomical Pathology, Kameda Medical Center Hospital, 5Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
有茎性胆嚢ポリープの大部分は良性のコレステロールポリープのため,経過観察される.増大傾向がある場合,大きさが10mm以上の場合,悪性を疑い手術する.今回我々は,悪性を疑い手術を行ったが,良性と診断された有茎性ポリープ3例を経験した.
【症例1】
72歳,男性.亀田幕張クリニック人間ドックで胆嚢腺筋腫症と診断され,毎年超音波検査を受けていた.2011年1月に強い心窩部痛を訴え,MRI検査で黄色肉芽腫性胆嚢炎が疑われたため,当院紹介となった.当院の超音波検査では,胆嚢底部から腹壁にかけて,扇状の低エコー域を認めた.胆嚢穿孔に伴う膿瘍ないし肉芽の形成を疑った.胆嚢底部に15mmの亜有茎性ポリープを認めた.基部で胆嚢壁の外側高エコー層は断裂していた.腹部CT検査や造影超音波検査で,この病変は全体が強く造影され,造影効果が遷延した.胆嚢穿孔と腹壁膿瘍形成,有茎性胆嚢癌の疑いで手術となった.手術の結果,胆嚢底部のRASの破綻に伴う腹壁膿瘍の形成と診断された.有茎性ポリープは,肉芽腫性ポリープと診断された.ポリープ内部に著明な血管拡張と出血を認めた.ポリープが強く造影され,造影効果が遷延したのは,内部の血管拡張が関係しているものと考えた.
【症例2】
54歳,男性.他院の検診超音波検査で胆嚢頚部に14mmのポリープ,胆石を認め,精査目的に当院受診.当院の超音波検査では胆嚢頚部に16mm×9mmのポリープを認めた.腹臥位の観察で,胆嚢頸部の壁に細い茎で付着していることがわかった.血流シグナルを認めなかった.その他に頚部から体部に最大5mmのポリープ及び5mm,7mmの結石を認めた.造影超音波検査では,造影剤静注20秒後から全体が造影され,30-40秒後にピークとなった.その後,徐々に造影効果が減弱し,90秒後には低エコーになった.MFI modeでは,ポリープ内に細かく不整な血管が,樹枝状に分布していた.胆嚢癌を疑った.手術の結果,16mm×9mmのポリープは腺腫か腺癌が疑われたが,MIB-1indexが低値のため,腺腫と最終診断された.
【症例3】
44歳,女性.他院超音波検査で胆嚢に24mmのポリープを認め,当院受診.当院の超音波検査では胆嚢体部に29.8mm×17.8mmの有茎性ポリープを認めた.体部肝側壁に細い茎で付着していた.壁との付着部に流入,流出する血流シグナルを認め,流入する拍動性血流の収縮期最高血流速度は43cm/sだった.ポリープ付着部周囲の外側高エコー層は保たれており,茎が細いことから,早期胆嚢癌を疑った.造影超音波検査では,造影剤静注15秒後にポリープ全体が造影され,30秒後にピークになった.その後造影効果は,徐々に減弱したが,120秒前後まで造影された.MFI modeでは,ポリープ中心から辺縁部に樹枝状に枝分かれする血管構造を認めた.手術の結果,過形成ポリープと診断された.
【考察と結語】
胆嚢ポリープは有茎性でも10mm以上であれば,癌を疑い手術するが,今回我々が経験した3例はいずれも良性であった.(症例2)は悪性化の可能性が高い腺腫だったが,造影効果が最も乏しかった.造影超音波検査による有茎性ポリープの良悪性の鑑別には,さらなる検討が必要である.