Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:肝癌Ⅰ

(S534)

短期間で興味深いエコー像変化を呈した肝細胞癌の一例

Hepatocellular carcinoma presented an interesting echo image change for a short period of time

佐伯 一成, 日高 勲, 松永 一仁, 高見 太郎, 寺井 崇二, 山﨑 隆弘, 坂井田 功

Issei SAEKI, Isao HIDAKA, Kazuhito MATSUNAGA, Taro TAKAMI, Shuji TERAI, Takahiro YAMASAKI, Isao SAKAIDA

山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学

Department of Gastroenterology and Hepatology, Yamaguchi University Graduate School of Medicine

キーワード :

【症例】
症例は47才女性.
【経過】
1993年よりC型慢性肝炎と診断されていた.20×年6月よりC型肝硬変症(Genotype 1b)に対するPEG-IFN+RBV+TPV3剤併用を開始し,8週間で7.6→1.9 logIU/lへのウイルス量低下を得ていた.8月×日に急性腹症にて当科を受診した.腹部超音波検査にて肝表S3にφ26×19mmのカプセル様を呈した低エコー腫瘤を認めた.雪だるま状を呈しており,内部に高エコーな部も一部に認めた.造影エコーでは腫瘤の周囲は血流増加していたが,低エコー部には血流には造影効果を認めず嚢胞もしくは膿瘍内出血を疑った.造影CTでも実質成分は認めず,低吸収結節として描出された.周囲には血流の増加を認めたが,炎症などによる浮腫状変化による影響を疑った.血液検査上,WBC 2850×106/l, CRP 0.23mg/dlと感染兆候は認めなかった.肝予備能はChild Pugh Aと良好であり,腫瘍マーカーはAFP 10.0ng/ml,AFP(L3) 28.2%,DCP 85mAU/mlであった.画像上は肝細胞癌(HCC)を疑う所見には乏しかったが,腫瘍マーカーからはHCCも否定できなかった.その後も深呼吸時には腹痛を認めたため,10病日に造影エコーを再検した.B-modeでは,実質成分を疑う内部エコーを有した低エコー部と嚢胞様の低エコーを認めた.造影エコーでは前回ははっきりしなかった実質部に明瞭な血流を認め,後血管相では欠損像となり,HCCに矛盾しない所見であった.嚢胞様の部にはやはり血流は認めなかったが,前回と比し縮小していた.B-modeでは一部高エコーとなっており,出血を疑った.腹部血管造影を施行したところ,実質部はHCCに矛盾しない所見であった.CTAでは実質部外側に造影効果のない低吸収腫瘤をみとめ,腫瘍内出血や感染後の変化を疑う所見であった.HCCと診断し,腹腔鏡下外側区域切除術を施行した.腫瘍部は腹膜と癒着していたものの,腫瘍の漿膜への露出は認めなかった.術後の組織所見では腫瘍部は中分化型HCCであり,嚢胞様の部には赤血球性分も認めた.周囲には貪食細胞の集簇を認め,出血の吸収期に矛盾しない所見であった.術後は腹痛も消失し,腹痛の原因として出血または癒着が考えられた.
【考察】
腫瘍内出血にて発症し,診断に難渋したHCC症例を経験した.当初は実質成分がはっきりしなかったが,時間経過とともに明瞭化した実質成分が観察され,造影エコーで診断が得られた.出血時点からの時間経過に従い血腫が吸収され,周囲の炎症が取れてくることにより腫瘍部の血流が明瞭化してきたと考えられた.腫瘍が小さい場合には腫瘍内出血により質的診断が困難となることがある.肝癌ハイリスクグループにおいて肝内血腫を認める場合には腫瘍内(外)出血の可能性も考え,間隔をおいて検索することが必要と考えられた.
【結語】
間隔を空けた腹部造影エコーにて実質成分が明瞭になり診断に至った症例であった.