Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:消化器Ⅱ

(S531)

早期胃癌におけるEUS深達度診断の検討

Early gastric cancer invasion depth by using endoscopic ultrasound

中藤 流以1, 畠 二郎2, 麓 由起子3, 岩井 美喜3, 谷口 真由美3, 竹之内 陽子3, 河合 良介2, 今村 祐志2, 眞部 紀明2, 春間 賢1

Rui NAKATOU1, Jiro HATA2, Yukiko HUMOTO3, Miki IWAI3, Mayumi TANIGUCHI3, Yoko TAKENOUCHI3, Ryousuke KAWAI2, Hiroshi IMAMURA2, Noriaki MANABE2, Ken HARUMA1

1川崎医科大学消化管内科学, 2川崎医科大学検査診断学, 3川崎医科大学附属病院中央検査部

1Division of Gastroenterology, Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School, 2Division of Endoscopy and Ultrasound, Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 3Department of Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital

キーワード :

【背景】
現在,分化型早期胃癌ではsm1(500μm以下)までの深達度であれば病変の部位,大きさを問わず内視鏡的粘膜下層剥離術(以下ESD)によって治療がされている.今後ESDの適応拡大が検討されており,術前の深達度診断はより一層の重要性を帯びてくると考えられる.
【目的】
現在,早期胃癌の深達度診断では内視鏡所見・NBI・超音波内視鏡検査(以下EUS)などを併用し総合的に判断を行うことが一般的である.今回,当院でのEUSの深達度診断の正診率を明らかにし,部位別,組織型別,形態別に検討を行った.
【対象】
2010年01月01日から2011年12月31日まで当院で上部消化管超音波内視鏡検査を施行された全179例のうち,早期胃癌と診断され治療を受け病理学的検討可能な69症例70病変について検討した.
【結果】
全症例の最終診断はm癌が48症例49病変(71.6%),sm1癌が6症例6病変(9.0%),sm2癌が15症例15病変(22.4%)であった.それぞれのEUSでの深達度正診率は,m癌で 77.6%,sm1癌で 16.7%,sm2癌で 46.7% で,全体での正診率は65.0% であった.現在,ESD適応と考えられている分化型癌の深達度であるsm1までに限って検討すると深達度正診率は89.1% であった.EUSによる深達度診断が術後の病理診断と大きく異なった症例を4例(5.8%)認めた.そのうち2例は術前にm癌と深達度診断していたが術後sm2癌と判明した.残りの2例はいずれもECJの病変で術前にss , sm2とそれぞれ深達度診断していたが術後m癌と診断された.次に正診が得られなかった24病変(34.3%)のEUS診断能(部位,組織型,形態)について深達度ごとに検討した.m癌は11例に正診が得られなかったが全例深読みで低分化癌4病変では2病変(50%)が深読みをしていた.形態については陥凹を伴わない病変13病変のうち4病変(30.8%)で深読みをしていた.部位別の検討ではECJの病変で2例と少ないものの,2例とも正診が得られず,外科的治療が施行された.sm1癌は5例に正診が得られなかったが,全例浅く深達度診断しており,形態では陥凹を伴った病変が4例(80.0%)と多く認められた.組織型では低分化癌は1例のみであるが浅く深達度診断していた.部位には明らかな傾向を認めなかった.sm2癌は8例で正診が得られなかったが,7例で浅く読影しており,1例で深く読影していた.形態は陥凹を伴った病変を6例(75.0%)と多く認めた.組織型では低分化・未分化癌の4病変のうち3病変(75.0%)で浅く深達度診断する傾向があった.部位では後壁側病変の深達度診断は良好であったが,体下部の病変3例では全例浅く深達度診断していた.他の部位で明らかな傾向は認めなかった.
【結語】
早期胃癌におけるEUSの深達度正診率は65%であったが,EUS深達度診断が治療方針決定に寄与できなかった症例は4例(5.8%)と少なく,sm1までに限ると89.1% と比較的高い正診率であった.m癌は組織型が低分化の病変と陥凹を伴わない病変で深く深達度診断する傾向があり,sm1癌では組織型が低分化の病変と陥凹を伴わない病変で逆に浅く深達度診断する傾向があった.sm2癌では組織型が低分化・未分化の病変と陥凹を伴った病変,部位では体下部の病変で浅く深達度診断をする傾向が認められ,注意を要する.