Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:膵の造影

(S529)

膵上皮内癌とStageⅠ膵癌の診断における超音波検査の有用性

Efficacy of EUS for diagnosing early pancreatic cancer

森島 大雅, 大塚 裕之, 石川 英樹

Tomomasa MORISHIMA, Hroyuki OTUKA, Hideki ISHIKAWA

公立学校共済東海中央病院消化器内視鏡センター

Department of Endoscopy, Tokai Central Hospital of the Mutual Aid Association of Public School Teachers

キーワード :

【目的】
日々の診療で進行した病期で発見されることの多い膵癌のうち,膵内に限局する膵上皮内癌,StageⅠ膵癌と診断された症例の画像所見を中心に検討した.
【対象】
2008年1月から2012年11月までの間に当院にて経験した膵上皮内癌1例,および2cm以下のTS-1膵癌5例のうちStageⅠ膵癌であった4例,の計5例.
【方法】
患者背景,診断契機,腫瘍径,主膵管径,各種画像検査での検出能(体外式超音波検査,造影超音波検査,Dynamic CT,ERP,EUS),病理学的評価を検討した.
【結果】
平均年齢は73歳(64-87),男性:女性=4:1,平均血清アミラーゼ値:85.8U/I(57-127),平均CEA:2.77ng/ml(1.32-4.14),平均CA19-9:53.5U/ml(6.8-156.1)であった.病変の占拠部位は,膵頭部1例,膵頭体移行部2例,膵体部2例,平均腫瘍径は17mm(13-20)であった.診断契機は,有症状例の2例では,黄疸1例,口渇1例であり,体外式超音波で膵管拡張を認め精査となった.無症状例の3例は,検診超音波検査で膵管拡張2例,多房性嚢胞性病変1例を指摘され精査となった.膵管径は平均4.2mm(2-6)であった.各種画像検査で,腫瘍を描出できた直接病変検出率は,体外式超音波検査:20%,造影超音波検査:50%,Dynamic CT:60%,ERP:75%,EUS:80%,であった.膵管拡張等の間接所見指摘率は,体外式超音波検査:80%,造影超音波検査:75%,Dynamic CT:80%,ERP:75%,EUS:100%であった.ERPを行った4例のうち分枝膵管から発生した膵癌症例1例を除き3例全例で膵管狭細像認めた.超音波検査(体外式,EUS)で直接指摘できた病変は,辺縁不整,境界不明瞭な低エコー腫瘤として描出されていた.間接所見は膵管拡張が最も多く,次いで腫瘍周囲の分枝膵管の拡張が指摘可能であった.これらの間接所見はERP像では,膵上皮内癌を含め全例で観察された.病理診断では,ERP時の膵液細胞診での陽性率は0%(0/3),ブラシ細胞診0%(0/1),EUS-FNAでの組織診100%(2/2),EUS-FNAでの組織診100%(2/2)であった.治療は全症例で外科的切除術が施行され,膵頭十二指腸切除術2例,幽門温存膵頭十二指腸切除術2例,脾合併体尾側膵切除1例であった.病理組織検査にて画像検査で指摘していた膵管狭窄部位は,StageⅠ膵癌症例では全例で癌組織による狭窄像を認め,膵上皮内癌症例では周囲の炎症細胞浸潤による狭細像であった.観察期間中央値28.8ヶ月(7-36)で,全例無再発生存中である.
【まとめ】
有症状,無症状症例共に腹部超音波検査にて拾い上げ診断され,造影超音波,Dynamic CT等での間接所見から膵腫瘍を疑い,EUSで病変自体を描出し診断が可能であった.EUSでは直接病変を検出困難であった膵上皮内癌を含めERP時の膵管像に狭細像を認めた.膵上皮内癌,StageⅠ膵癌症例は全例外科的切除可能で治癒切除が行われた.
【結論】
低侵襲で簡便な体外式超音波検査や造影検査にて間接所見を拾い上げ,高い分解能を有するEUSを施行することが膵上皮内癌,StageⅠ膵癌の診断に有用であると考えられた.