Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:Virtual Touch Tissue Quantification(VTTQ) Ⅰ

(S525)

NAFLDにおけるVTTQを用いたNASH診断の検討

Diagnosis of NASH using VTTQ of NAFLD

青山 和佳奈1, 西川 徹1, 2, 加藤 美穂1, 杉山 博子1, 鈴木 亜委1, 吉岡 健太郎2, 橋本 千樹2, 川部 直人2, 市野 直浩3, 刑部 恵介3

Wakana AOYAMA1, Toru NISHIKAWA1, 2, Miho KATOU1, Hiroko SUGIYAMA1, Ai SUZUKI1, Kentarou YOSHIOKA2, Senju HASHIMOTO2, Naoto KAWABE2, Naohiro ITINO3, Keisuke OSAKABE3

1藤田保健衛生大学病院臨床検査部, 2藤田保健衛生大学医学部肝胆膵内科, 3藤田保健衛生大学医療科学部

1Department of Clinical Laboratory, Fujita Heaith University Hospital, 2Division of Liver Biliary tract and Pancreas Diseases, School of Medicine, Fujita Heaith University, 3School of Health Sciences, Fujita Heaith University

キーワード :

【はじめに】
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は肝硬変,肝癌へと進行する疾患であり,このため非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の中で単純性脂肪肝(SS)とNASHとの鑑別を行うことは臨床上重要である.しかし,現在NASHの確定診断には侵襲性の高い肝生検による病理組織診断が必須である.近年,開発されたVirtual Touch Tissue Quantification(以下VTTQ)を用いた肝硬度の測定は,超音波により直接肝臓の硬さを評価する手法であり,肝線維化stageの評価に有用な手法として多くの報告がなされている.そこで,NAFLDにおける肝硬度測定の有用性およびNASHの鑑別診断について検討を行った.
【対象】
腹部超音波検査にて脂肪肝の所見を認めた連続192例を対象とした.なおHCV感染症,HBV感染症,アルコール性肝障害,自己免疫性肝疾患は除外した.対象の内訳は男性106名,女性86名,平均年齢56.6±16.0歳,BMI(26.28±3.46)である.なお,192例のうち病理組織診断にてNASHと確定診断されたものは9例である.
【方法】
超音波診断装置は,持田SIEMENS社製S2000を用い,VTTQにてせん断弾性波の伝搬速度(m/s)を計測した.計測方法は,右肋間走査にて肝右葉を描出し,肝表面より3cm下にROIを設定した.なお,サンプリングはランダムに10ポイントとし,その中央値を測定値(Vs値)として用い以下の検討を行った.
①Vs値と超音波検査による各種脂肪肝所見との比較
②Vs値と各種血液データとの比較
③NASHとそれ以外の症例との比較
【結果】
①超音波検査による脂肪肝所見に基づきFL1群(Bright liverのみ),FL2群(Bright liverおよび肝腎コントラスト),FL3群(FL2群の所見に加え深部エコー減衰)の3群に分け,Vs値を比較すると,いずれの群間においても有意差は認められなかった.また,BMIについても同様に比較を行うと,いずれの群間においても有意差は認められなかった.
②血液データの各種肝線維化マーカー(ヒアルロン酸,血小板,PT,AST,ALT)とVs値を比較検討すると,ヒアルロン酸(r=0.6186),AST(r=0.4957),ALT(r=0.2854)は正の相関を認め,血小板(r= -0.3302),PT(r=-0.5985)とは負の相関を認めた(p<0.005〜p<0.0001).
③NASHのVs値(m/s)は2.11(1.62-2.74)であり,それ以外の症例のVs値(m/s)は1.13(1.01-1.34)であった.両者にはp<0.0001と有意差を認めた.そこでNASHの診断能についてROC曲線によりVs値と肝線維化マーカー(ヒアルロン酸,血小板,PT,AST,ALT)を比較した.Vs値はカットオフ値1.54,曲線下面積0.89344,感度89%,特異度85%,陽性的中率22%,陰性的中率99%となり,他の肝線維化マーカーも含めた検討で最も高い曲線下面積値を認めた.
【考察】
Vs値は各種脂肪肝所見においていずれの群間にも有意な差は認めなかった.このことからVTTQは脂肪沈着の程度による影響が少ないことが示唆された.また,Vs値は血液データの各種肝線維化マーカー(ヒアルロン酸,血小板,PT,AST,ALT)と良好な相関を認めたことからVTTQはNASH診断に寄与するものと考えられた.さらに,Vs値はNASHとそれ以外の症例の間に有意差を認め,ROC曲線によるNASH診断能の検討では各種肝線維化マーカーと比較しVs値が最も良好な指標であることから,今後のNASH診断においてVTTQはそのマーカーとして期待がもたれるものと思われた.