大枝 敏¹, 小野 尚文², 田中 賢一², 江口 尚久², 江口 有一郎¹, 水田 敏彦¹

Satoshi OHOEDA¹, Naofumi ONO², Kenichi TANAKA², Takahisa EGUCHI², Yuichirou EGUCHI¹, Toshihiko MIZUTA¹

¹佐賀大学内科, ²ロコメディカル江口病院内科

¹Medicine, Saga University School, ²Medicine, Eguchi Hospital

キーワード :

【はじめに】
Elastography は乳腺や甲状腺疾患などの体表臓器の質的診断において有用な検査法となってきた．腹部臓器である肝臓に関しては，肝の硬さを評価する方法としてfibroscanやVTTQ （Virtual-Touch Tissue Quantification） など様々な方法が臨床応用されてきている．我々は前回，腹部用のコンベックス型プロブを用いてElastographyを行い，その肝腎のElast比で肝線維化の検討を報告した．今回，この腹部用コンベックス型プロブによって得られるElastographyの画像が肝内病変の描出に現時点でどの程度可能であるか試みてみた．（対象）対象は各種画像診断にて臨床診断した18症例である．症例の内訳は，肝細胞癌4例，肝血管腫4例，肝のう胞4例，胆管癌1例，限局性脂肪浸潤3例，脂肪肝のspared area2例である．
【方法】
使用した装置はLOGIQ S8，腹部用のコンベックス型プロブ（C1-5）を用いて肋間走査の用手的圧迫法にてElastographyを行った．設定条件は，2.5MHz, Frame Rejection-2 （心拍動が感知できるように設定），ROIは表面から観察部位より深部まで広範囲に設定．そして柔らかい領域は赤色で，硬い領域は青色で表示した．これら条件で描出された画像において，疾患に特徴的所見が認められるか画像診断として耐えられるか検討した．
【結果】
肝細胞癌では，全例非癌部より青系に表示され，2例は内部の一部は柔らかい表示が認められた．肝血管腫では1例は非腫瘤部と同等に，3例は硬く表示されたが細胞癌より柔らかかった．肝のう胞では全例青く表示され，のう胞下方が赤く表示された．胆管癌は青く表示された．限局性脂肪浸潤3例は赤系に表示され，脂肪肝のspared areaは周囲の脂肪肝部より青系に表示された．
【考察および結語】
今回，腹部用のコンベックス型プロブを用いて用手的圧迫法でElastographyを行ってみた．ROIを広くとることで得られた画像が画像診断法として耐えうるか，特徴的所見が認められるかの試みであり，思ったより良好な画像が得られた．圧迫の仕方で肝表面が赤く帯状に表示され，ドーム下の表示が悪いことも判明した．また，正常肝では比較的均一に表示されるも，肝硬変症では肝全体のばらつきが強かった．用手的圧迫であるため再現性の問題や境界部の不鮮明などの多くの問題があるが，装置およびソフトの改良により，新たな手法の一つになることを期待したい．