藤本 研治^{1, 3}, 鈴木 夏実², 加藤 道夫³

Kenji FUJIMOTO^{1, 3}, Natsumi SUZUKI², Michio KATO³

¹国立病院機構南和歌山医療センター臨床研究部肝臓病診断治療研究室, ²日立アロカメディカル株式会社メディカルシステム営業部大阪支店, ³国立病院機構南和歌山医療センター内科

¹Division of Clinical Research （Hepatogastroenterology）, National Hospital Organization Minamiwakayama Medical Center, ²Medical System Sales Division, Osaka office, Hitachi Aloka Medical, Ltd., ³Department of Internal Medicine, National Hospital Organization Minamiwakayama Medical Center

キーワード :

【目的】
我々は2004年のRTE搭載機発売直後より日立メディコ社（当時）と共同で，心拍動の圧迫により生ずる肝臓の歪みにつき，Real-time Tissue Elastography（R）（以下RTE）を用いた非侵襲的肝線維化評価法を考案し1），その有用性を報告してきた．当初，RTEの肝線維化評価法としては硬い領域の表示面積から得られたLiver Elasticity Score（以下LE Score）が2），その後，RTE画像の解析データから算出した肝線維化staging推定値であるLiver Fibrosis Index（以下LF Index）が炎症の影響を受けることのない肝線維stage評価法であると報告してきた3）4）5）．しかしRTE画像のうち固いとされる青の信号が肝線維組織を直接反映するという報告はまだない．一方，最近RTEで得られる信号を診断装置内で三次元画像処理が可能となった．今回慢性肝炎症例に於いて3D-RTEを施行し，肝線維組織との比較を行った．
【方法】
対象は2012年9月から2012年11月迄に当院に於いて3D-RTEを施行，肝生検病理組織にて診断されたC型慢性肝炎35例，正常ボランティア1例合計36例である．F stage内訳はF0：1例，F1：11例，F2：11例，F3：8例，F4：5例．超音波診断装置は日立アロカ社製 HI VISION Ascendusを使用，探触子はLV74（13-5MHz・中心周波数7.5MHz）を使用した．RTEは肝右葉を右肋間より観察，心拍動による歪みを利用し観察．3D設定は高精細3D，3D撮像方法はメカニカルスキャン，振り幅5°で，3D再構成方法は，ボリュームレンダリングである．得られた3D-RTE画像の所見は以下の通り3D-Liver Elasticity Score（3D-LES）としてscore化した．score1：青の信号はごくわずかで連続性を認めない．score 2：青の信号に連続性が見られるが架橋形成を認めない．score3：青の信号に連続性が見られ，架橋形成傾向を認める，もしくは架橋形成を認めるが，結節形成を認めない．score4：青の信号による架橋形成，結節形成を認める．以上のscoreを同一検者が行った．全例の3D-LESについて肝生検病理組織F stage（新犬山分類）で比較検討した．
【成績】
3D- LES観察の結果，F stageが進むにつれ青信号が多く占め，架橋様に連続する傾向にあり，F4症例では結節形成が認められた．統計学的な検討の結果，各stage群の比較において3D-LES平均値はstageが高くなるにつれ有意に高値（r=0.74, p＜0.001）であった．3D-RTEの探触子は高周波数のため深部の線維化評価には限界があるが，今後，低周波数用の3D-RTE画像用の探触子が開発され，肝線維化の評価が容易となることを期待したい．
【結論】
3D-RTEによりROI内で固いとされる青の信号が全ての肝線維組織を反映するかは今後の検討が必要であるが，肝組織内の線維化組織を反映することが示唆された．
【参考文献】
1）三竹毅，外村明子，元木満：Real-time Tissue Elastographyを用いた肝線維化評価，BIO Clinica, 2011; 12: 1141-1145.
2）Fujimoto K, Wada S, Oshita M et al.: Non-invasive evaluation of hepatic fibrosis in patients with chronic hepatitis C using elastography. MEDIX Suppl. 2007: 24-27.
3）藤本研治，加藤道夫，外村明子　他．: Real-time Tissue Elastographyを用いた肝線維化の非侵襲的評価法-Liver fibrosis index（LF Index）によるstage判定．肝臓，2010; 51: 539-541.
4）Fujimoto K, Kato M, Kudo M. et al.: Oncology, in press.
5）Shiina T, Maki T, Yamakawa M. et al.: Mechanical Model Analysis for Quantitative Evaluation of Liver Fibrosis Based on Ultrasound Tissue Elasticity Imaging. Jpn. J. Appl. Phys. 2012; 51: 07GF11-1.