Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:消化器Ⅰ

(S513)

小児急性虫垂炎における超音波検査による糞石描出の工夫

Ultrasonographic evaluation of calculus in pediatric acute appendicitis

藤井 喜充, 木野 稔

Yoshimitsu FUJII, Minoru KINO

中野こども病院小児科

Pediatrics, Nakano Children’s Hospital

キーワード :

【はじめに】
小児急性虫垂炎において虫垂結石(糞石)が存在すると,保存的療法が奏功しても高率に再発するため,手術の相対的適応となる.従って糞石の有無を正確に診断することは,治療方針決定上極めて重要である.しかし日常診療において,周囲虫垂壁に比してエコー輝度が高くないため糞石として認識されず,CTや手術で確認される症例を我々はしばしば経験する.この点に関して我々はすでに平成21年の本会において,糞石のエコー輝度とCT値が逆相関した7例を,「CT値が高いほど石灰化が強く内部構造が相対的に均一である」と考察し報告した.今回は症例を追加し,超音波の周波数を新たな検討項目とし,糞石に関して「望ましい検査法」を考案したので報告する.
【対象】
平成17年4月1日から平成24年8月31日までに,当院の超音波検査で急性虫垂炎と診断され,CT値が測定された男児9例女児5例:5〜15歳で中央値10歳.
【方法】
超音波検査は東芝Aplio50で5MHzと9MHzのBモードで判定した.順序は最初に5MHzで観察した後,9MHzで行った.超音波検査で糞石と判断した基準は,1)周囲虫垂壁と比較し高エコー腫瘤,もしくは2)音響陰影 とし,3)虫垂壁との内部構造の違いが明瞭な腫瘤像,は糞石を疑う参考所見とした.CT検査は東芝Alexion(16列)を用い単純ヘリカル撮影とした.
【結果】
5MHzで高エコーに描出され,この時点で糞石と判定された症例は4例(CT値:201.1〜433.6H.U.),5MHzで低エコーもしくは等エコーであり,3)より糞石の存在を疑い9MHzで高エコーに描出され糞石と判定可能であったのは4例(73.0〜231.0H.U.)であった.他の6例は5MHzで低〜等エコー,9MHzで等エコーで超音波検査では糞石と判定できず,3)より糞石の存在を疑いCT検査で判定した(63.5〜412.2H.U.).5MHzより9MHzの方でエコー輝度が上昇したのは,10例(73〜433.6H.U.)で,上昇を認めなかった4例はいずれも5MHzで等エコーであった(63.5〜267.2H.U.).
【考察】
統計学的有意差は認めないものの5MHzで高エコーに描出された糞石の方がむしろCT値が高い傾向を示した今回の結果により,前回報告の考察について再考の必要に迫られた.虫垂壁自体が周囲の正常腸管よりもかなりの低エコーとなっており,なおかつ糞石のエコー輝度自体が想像よりも元々低いのが,超音波で糞石を検出しにくい原因であろう.周波数と関連するのは減衰であり,トレード・オフの関係にある透過性・後方散乱が輝度に関連する.糞石は便に石灰成分が沈着して形成されるため,もともと内部構造は高度に不均一であると考えられる.このため透過性の影響が相対的に小さくなり,微小石灰化からの後方散乱がエコー輝度に最も影響していると考察した.なお9MHzで糞石のエコー輝度が上昇傾向を示したのは,周波数依存性減衰でより周囲虫垂壁のエコー輝度が低下したためと推察した.したがって腹部超音波検査で小児急性虫垂炎の糞石の存在を判定する際には,① 5MHzで高エコー腫瘤像を探し,描出し得なくても等エコー〜低エコーの腫瘤像(虫垂径が局所的に太くなっている個所)を検索する.② ①で糞石と確定できなければ9MHzを用い同部位が高エコー腫瘤で描出されるか検索する.③ ①→②で高エコー腫瘤が確認できず,糞石と確定できなければCT検査を考慮する.この3段階で行えば糞石に関しては見落としを少なくし,CT検査による被爆を減らすことができると結論した.