Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:消化器Ⅰ

(S511)

腹部救急疾患におけるフュージョン画像(超音波診断/CT診断)の有用性

Utility of fusion imaging of ultrasonography and CT scan for abdominal emergency

甲斐田 教子, 田中 正俊

Noriko KAIDA, Masatosi TANAKA

弘恵会ヨコクラ病院検査科

Medical Technology, Koukeikai Yokokura Hospital

キーワード :

【はじめに】
腹部超音波検査(以下US検査)とCT画像のフュージョン機能は肝腫瘍の診断,治療におけるナビゲーション機能として評価をうけている.今回,この機能を腹部救急疾患の患者に対して試行し,その有用性を検討したので報告する.
【対象と方法】
対象は,症例1)70代女性,虫垂炎穿孔による腹腔内膿瘍,症例2)90代女性,虚血性腸炎,症例3)60代男性,もち食による腸閉塞である.救急搬入後にUS検査,腹部CT検査試行し,患者同意取得後に再度CT画像を超音波診断機器(東芝Aplio500)に取り込んでフュージョン画像によるUS検査を施行した.以下に症例3)を提示する.
【症例提示】
腹部膨満と腹痛で救急搬入,腹部X線検査で腸閉塞疑い,US検査とCT検査を施行した.US検査で腸閉塞,CT検査で腸管内異物(食物残渣)による腸閉塞と診断した.再度フュージョン機能を用いて精査したところ,食物残渣に一致してhigh echoの異物を確認し,拡張側と非拡張側における閉塞部に腸管蠕動を確認できたので,デニスチューブ挿入せず,絶食,輸液による経過観察とした.問診で腸管内異物は“もち”と考えられ,翌日には閉塞改善し腹部症状は改善した.その後,腸に閉塞した“もち”を確認する目的で,“もち”を購入し,乾燥した状態と,加熱処理した状態でCT検査によるCT値の計測とUS検査による水槽実験を行った画像を図に示す.腸閉塞を起こした“もち”の状態は加熱処理後の柔らかい状態だったが,この状態でも腸閉塞の原因となったと考えられる.
【考察と結論】
CT検査とUS検査では,それぞれの検査に診断能の違いがある.今回フュージョン機能による再検査によって,以下の有用性と欠点を確認した.1)疾患の位置情報,詳細情報,血流情報,運動性,連続性についてCT画像をリファレンスにしながら医師に対して客観的に情報提供できた.2)検査技師の技量の向上と疾患に対する理解に寄与した.3)患者の移動,CT情報の移送に時間を要するが,この点はシステムの改善により解決できると思われる.以上,US検査によるフュージョン機能を用いた診断は,腹部救急疾患においても有用であることが確認できた.