野田 晃世¹, 小川 力¹, 森岡 弓子¹, 柴峠 光成¹, 村川 佳子², 河合 直之², 木太 秀行², 嶋田 俊秀², 工藤 正俊³

Teruyo NODA¹, Chikara OGAWA¹, Yumiko MORIOKA¹, Mitsushige SHIBATOUGE¹, Yoshiko MURAKAWA², Naoyuki KAWAI², Hideyuki KITA², Toshihide SHIMADA², Masatoshi KUDO³

¹高松赤十字病院消化器内科, ²高松赤十字病院検査部, ³近畿大学医学部附属病院消化器内科

¹Division of Gastroenterology and Hepatology, Takamatsu Red Cross Hospital, ²Division of Clinical laboratory, Takamatsu Red Cross Hospital, ³Department of Gastroenterology and Hepatology, Kinki University School of Medicine

キーワード :

【背景】
非侵襲的に行える腹部超音波検査の有用性については認識されているが，検査中の臓器，血管等の位置関係の把握に関しては，肝臓の変形が多く認められる肝硬変症例では時に容易でないことも経験する．またRFA（ラジオ波焼灼術）等の経皮的穿刺治療を頻回に受けた症例における，新規病変と治療後結節との位置関係，結節内における辺縁再発の部位の同定に関しては難渋することもあり，同定までの検査時間，正診率には検査者依存性が認められると考えられる．上記のdisadvantageを補う新しいmodarityとして，volume navigation system等が開発され，その臨床での有用性は非常に高い．しかしながらhigh-endの超音波装置が必要である事，機械によりdataの入力方法，位置合わせの方法が違い，慣れるまで時間がかかることなどの問題点も認められる．
【目的】
今回我々はFUJIFIRMより開発された，3次元画像解析システムボリュームアナライザー SNAPSE VINCENTのアプリケーションソフトである仮想超音波解析機能を用いて，腹部超音波検査における有用性を検討した．
【方法】
腹部超音波検査を開始して3年以内の検査技師4人，研修医3人，消化器内科専攻医の3人の計10人を対象に，VINCENTの仮想超音波解析機能を用いて腹部超音波検査を行い無記名のアンケートを行った．
【結果】
10人中10人全員がVINCENTの使用を有用との回答した．特にCT，MRIにて指摘されている結節の精査に関しては右肋間走査での検査前の血管等との位置関係の確認に有用と全員が回答し，ほか有用性の回答が高かった項目は，肝内の解剖的位置関係の再確認，近接する2個以上の結節の位置関係の同定，超音波検査時間の短縮，結節内における辺縁再発の部位の同定，アプリケーションソフトの簡便さ等であった．なおvolume navigation systemとの比較の質問では，詳細な観察，治療時の微調節リアルタイム性などの面からは，VINCENの仮想超音波解析機能と，volume navigation systemとの併用が非常に有用と回答であった．
【考察，結論】
現在high-endの超音波検査装置は当院に1台しかなく，実際には緊急USの症例，治療等で中〜上級者が使用している場合が多ことから，初心者はvolume navigation systemの有用性は認識しながらも，volume navigation systemの使用機会が少ない問題点，volume navigation systemのdata読み込み，位置合わせを十分に理解していない問題点が浮き彫りとなり，その問題点をカバーするうえでも簡便に行え，high-endの超音波装置がなくても行うるVINCENTの仮想超音波解析機能は非常に有用と考えられた．