工藤 篤¹, 飯島 尋子², 田中 真二¹

Atsushi KUDO¹, Hiroko IIJIMA², Shinji TANAKA¹

¹東京医科歯科大学肝胆膵外科, ²兵庫医科大学肝胆膵科

¹Hepatobiliary pancreatic surgery, Tokyo Medical and Dental university, ²Ultrasound and Hepatology, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【背景と目的】
術中造影超音波（CEIOUS） におけるVirtual portal venography は肝臓脈管内腔のPerspective Projection Imageをリアルタイムに3D構築する新技術であり，脈管の外観を再構築する従来法より肝切除の術中ナビゲーションに適している．同技術と3D-simulationのボリュームデータをフュージョンさせることでさらなる肝切除の安全性向上が期待されるが，その基礎データとなる3Dsimulation（+CEIOUS）の意義を検討することが本研究の目的である．
【方法】
当科では2008年から手術症例全例に対してソナゾイドを用いたCEIOUSを行い，vascular phaseにおける血流流入様式の検討を行い，Kupffer phase で同定される腫瘍をすべて切除している．対象は2010年9月〜2012年3月における肝細胞癌に対する解剖学的肝切除75例で3D-simulationとCEIOUSの意義を統計学的に解析した．Virtual portal venography はシングルスイープで3Dボリュームデータを取得し，MPR imageからHigh Density Renderingで高速画像取得・演算を行うことで，門脈本幹から腫瘍までのルートを自動追尾でリアルタイムに構築した．実際のナビゲーション方法はビデオで供覧する．
【成績】
予想切除率の平均は34％で，予想非腫瘍部切除率は26％であった．癌部を含めた予想切除容量と切除標本重量の相関係数は0.961（P＜0.0001）と正の相関を認めた．術前3Dsimulation群24例は，pringle時間が長かったが（P=0.024），手術時間に差はなかった（P=0.104）．出血量（P=0.002） と輸血量（P=0.046） は有意に少なく，在院期間が短かった（P=0.014）．Virtual portal venography は3Dsimulation で確認できないより精細な解剖を把握することが可能で術中ナビゲーションに有用であった．
【結論】
術前3D simulationを用いた切除は出血が少なく，標本摘出後の止血時間を短縮した．