青木 武士, 村上 雅彦, 古泉 友丈, 榎並 延太, 藤森 聡, 草野 智一, 山田 宏輔, 渡辺 誠, 大塚 耕司, 加藤 貴史

Takeshi AOKI, Masahiko MURAKAMI, Tomotake KOIZUMI, Yuta ENAMI, Akira FUJIMORI, Tomokazu KUSANO, Kosuke YAMADA, Makoto WATANABE, Koji OTSUKA, Takashi KATO

昭和大学消化器・一般外科

Department of Gastroenterological Surgery, Showa University

キーワード :

【目的】
術中超音波は肝切除において腫瘍や脈管の同定や離断方向を決定する上で極めて有用な術中検査である．腹腔鏡下肝切除においてはその操作性が限定されることから，腹腔鏡下手術に特化した理想的なナビゲーションの開発が必要とされる．かかる点において，計画通りの手術を正確で安全に行うために，術者を目標へ導く新たな手術ナビゲーションをvolume navigationを用いて支援した．
【方法】
術前：手術適応のある肝腫瘍性病変（19例）に対し術前CT画像，MRI画像を撮影．Volume Navigation機能搭載超音波装置（VNUS）として，LOGIQ9 （GE ヘルスケア）を使用．術前画像データをLOGIQ9にローディングし同期させる．術前に同システムを用い，腫瘍，ランドマークとなる脈管等の位置診断を行なった．開腹肝臓手術 （preliminary study）：皮膚消毒前に磁場発生装置を手術台（患者右脇下）に設置する．開腹後，肝表面上でVNUS探触子をおき，軸設定を行う．術前に取り込んだCTあるいはMRI画像データをVNUSモニター上に呼び込み，超音波画像と同期させるため，超音波探触子を操作し臓器のメルクマークをtargetingし同期を完了させる．肝切離前に超音波探触子を肝臓表面にあて，術前にランドマークとした脈管枝を描出した．腹腔鏡下手術：術前3D work stationとしてZaiostaionを用い各脈管および腫瘍をそれぞれ色分けし，動画像をモニター上に同時に表示し参照した．さらにポジションセンサー（Virtu TRAX: GE ヘルスケア）を用いて，器具の先端位置情報を取得し，肝臓内部のランドマークをあらかじめ示しておくことで，needle in plane像を描出後，器具からの肝臓内部までのランドマークまでの離断面を画像情報として示した．
【成績】
開腹肝切除：eTRAX needleを積極的に導入することで，術中肝内ランドマークの位置確認が容易であった（同定率：88.8％）．腹腔鏡下手術：VNUSを用いた腹腔鏡下肝切除を12例の肝腫瘍性病変に対し施行した．全例色分けされたCT画像とのリアルタイムでの統合画像が可能であった．ポジションセンサーを用いることで，マーキングした肝内ランドマークを常にトラッキングして表示することが可能であり，その同定率は91.6％（11/12）であった．
【結論】
VNUS機能を搭載した超音波装置を術中に導入することにより，術中肝臓内部ランドマークの特定に有用であると考えられた．またポジションセンサーを用いることで，切除のランドマークとなる脈管を確認し，離断方向を支援することが可能になった．