Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:先天性心疾患Ⅲ

(S501)

右室二腔症に合併した大動脈弁および肺動脈弁感染性心内膜炎の一手術例

A case of surgical treatment for infectious endocarditis with ventricular septal defect and double-chambered right ventricle

和田 春子1, 柏瀬 一路1, 西尾 まゆ1, 榊 雅之2, 上田 恭敬1

Haruko WADA1, Kazunori KASHIWASE1, Mayu NISHIO1, Masayuki SAKAKI2, Yasunori UEDA1

1大阪警察病院循環器内科, 2大阪警察病院心臓血管外科

1Cardiovascular Division, Osaka Police Hospital, 2Department of Cardiovascular Surgery, Osaka Police Hospital

キーワード :

【症例】
52歳男性.幼少時に心室中隔欠損症(VSD)を指摘され,20代で手術を勧められるも放置.2012年9月より全身倦怠感,発熱を認めていた.10月末日前医を受診,発熱に対する精査加療目的で入院,心不全を合併する感染性心内膜炎の疑いにて11月某日当院紹介受診.経胸壁心エコーおよび経食道心エコーにて重度大動脈弁狭窄症(peakPG70mmHg)および重度右室肥大(22mm),肥大心筋による著明な右室流出路狭窄(peakPG120mmHg)を認め,大動脈弁には疣贅(60×50mm)が付着していた.肺動脈弁は輝度上昇を認めるものの疣贅の付着や狭窄は認めなかった.またVSDは認めなかった.心不全および感染性心内膜炎に対する加療後に,心臓カテーテル検査を施行.gas samplingにてO2 step upは認めなかった.右室流出路30/4mmHg, 右室心尖部112/14mmHgと右室内で著明な圧較差を認め,右房右室造影では右室二腔症(DCRV)を疑う像であった.重度大動脈弁狭窄症,右室流出路狭窄に対して手術施行.大動脈弁は高度石灰化を認め,大動脈弁及び肺動脈弁,右室流出路に疣贅が付着していた.右室内は二腔症に合致する所見であったが,VSDの合併は認めなかった.大動脈弁および肺動脈弁置換術および右室流出路肥厚心筋切除術を施行した.組織学的には大動脈弁および肺動脈弁ともに繊維芽細胞や慢性炎症細胞浸潤を伴った肉芽腫組織を認め,亜急性期感染性心内膜炎の像であった.右室流出路切除心筋は心内膜の著明な線維性肥厚を認め,炎症細胞浸潤が散見されこちらは慢性期感染性心内膜炎の所見であった.心筋細胞の肥大や心筋症を疑う所見は認めなかった.術後経過良好にて退院され,現在外来にて経過観察中である.
【考察】
DCRVは,中隔縁柱から右室自由壁方向にのびる肉柱が肥厚し,右室流入路側高圧腔と流出路側低圧腔の2つの腔を形成する疾患であり,先天性疾患の1%の発生率を示すまれな疾患である.DCRVに2弁の感染性心内膜炎を合併した症例は非常に稀であり,経胸壁および経食道心エコーにて観察し得た症例を経験したため若干の文献的考察を加え報告する.