Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:冠動脈疾患

(S497)

心肺蘇生成功直後に施行された心エコーによる左室壁運動と急性冠症候群診断の経験

The Utility of Echocardiography in The Diagnosis of Acute Coronary Syndrome immediately after successful cardiopulmonary resuscitation

日高 貴之, 宇都宮 裕人, 光葉 直也, 石橋 堅, 小田 登, 土肥 由裕, 栗栖 智, 中野 由紀子, 山本 秀也, 木原 康樹

Takayuki HIDAKA, Hiroto UTSUNOMIYA, Naoya MITSUBA, Ken ISHIBASHI, Noboru ODA, Yoshihiro DOHI, Satoru KURISU, Yukiko NAKANO, Hideya YAMAMOTO, Yasuki KIHARA

広島大学大学院医歯薬保健学研究科・研究院循環器内科学

Cardiovascular Medicine, Hiroshima University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
急性冠症候群は,心肺停止 (CPA)の主な原因の一つである.心エコーによる左室壁運動評価は,急性冠症候群 (ACS)の診断に有用である.心肺蘇生 (CPR) に成功した症例において,原因精査のため心エコー検査は必須であるが,心肺蘇生に成功した直後においては,電気的直流除細動や各種循環作動薬の使用,心肺停止に伴う全心筋虚血,アシデミアなどが左室壁運動に影響を与える可能性があり,ACS診断のための左室局所的壁運動異常 (SWMA)の判定に苦慮する場合がある.
【目的】
心肺蘇生成功直後に施行された心エコーによる左室壁運動評価の急性冠動脈症候群診断における有用性を検討すること.
【方法】
2007年4月から2012年3月の間に,当院に心肺停止のため搬送され心肺蘇生に成功後,冠動脈造影 (CAG)を施行した18例 (62.6±11.6 歳,男性 17例)を対象とした.検討は後向きに行い,診療記録より情報を取得した.心肺蘇生の成功は自己心拍の再開とした.血液ガス分析,左室壁運動に関する評価は,自己心拍再開直後の結果を用いた.血液生化学検査は当院到着時に行われた結果を用いた.心エコーは,自己心拍再開直後に当院循環器内科医師によって施行された.CAGにて得られた冠動脈所見に基づいてACSの確定診断を行い,これを参照として,心エコーによるSWMAの存在に基づいたACS診断の正診率を検討した.また,対象を正診群と誤診群に分け,患者背景を比較した.
【結果】
18例中,12例がACSと確定診断され,15例にSWMAを認めた.SWMAに基づいたACS診断の正診率は,72.3% (13例)であった.偽陽性率,偽陰性率はそれぞれ22.2% (4例),5.6% (1例)であった.正診群と誤診群間で,心エコー施行時の年齢,血圧,脈拍,心肺停止時間は同等であり,初期心電図波形の分布,電気的直流除細動とエピネフリンの使用割合は同等あった.対象とした全例において,心筋逸脱酵素の上昇が認められた.誤診群で正診群に比し,pHが有意に低値であり (7.20±0.07 vs 7.32 ±0.14, p=0.04),血中乳酸値が有意に高値であった (11.7±7.2 mmol/L vs 4.5±3.0 mmol/L, p=0.01).
【考察】
SWMAに基づいたACS診断は,良好な診断能を有する.誤診例の多くは偽陽性であった.誤診群において,アシデミアが進行しており,左室壁運動に影響を与えた可能性が考慮された.また,対象群における年齢性別の分布,心筋逸脱酵素の上昇などが検者に先入観を与え,偽陽性が比較的多く含まれたと考えられた.本研究は後ろ向き,小規模研究であるため,より大規模な前向き試験にて結果を確認する必要がある.