Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:症例Ⅱ

(S495)

若年性脳梗塞の精査中,心エコー図検査にて診断された未破裂バルサルバ洞動脈瘤の1例

Unruptured noncoronary sinus of Valsalva aneurysm: Suspected Source of Juvenile Cerebral Embolism

田辺 康治1, 麻植 浩樹1, 杜 徳尚2, 杉山 洋樹2, 武本 梨佳1, 渡辺 修久1, 永瀬 聡2, 河野 晋久2, 伊藤 浩2

Yasuharu TANABE1, Hiroki OE1, Norihisa TOH2, Hiroki SUGIYAMA2, Rika TAKEMOTO1, Nobuhisa WATANABE1, Satoshi NAGASE2, Kunihisa KOUNO2, Hiroshi ITO2

1岡山大学病院超音波診断センター, 2岡山大学循環器内科

1Center of Ultrasonic Diagnostics, Okayama University Hospital, 2Department of Cardiovascular Medicine, Okayama University

キーワード :

【症例】
47歳,男性
【既往歴】
S48年,心室中隔欠損症に対し手術
【現病歴】
2012年8月,小脳梗塞を発症し,近医に入院の上加療を受けていた.脳MRI/MRAや頸動脈などの血管自体の異常所見は認められず,脳梗塞発症前より感冒様症状を伴わない38度の発熱を認めていたことなどから,感染性心内膜炎も含めた心原性脳塞栓の可能性が疑われ,当院を紹介受診された.
【現症】
身長164cm,体重58kg,意識清明,血圧117/67 mmHg,左右差なし,呼吸音清,胸骨左縁第3肋間でLevine 2/6の収縮期雑音を聴取,下肢浮腫を認めず,末梢動脈触知良好左右差なし.皮疹なし.血液検査では炎症反応の上昇は認めず,血液培養検査は陰性であった.心電図では完全右脚ブロックを認め,Holter心電図検査では心房細動は認められなかった.経胸壁心エコー図検査では,左室の軽度拡大を認め,左室駆出率は65%と保たれていた.大動脈弁は3尖弁,中等度の大動脈弁逆流および右心房内に突出する無冠動脈洞の瘤状変化を認めた.経食道心エコー図検査でも同様に無冠動脈洞瘤の所見を認めた.バルサルバ洞の最大径は58mm,瘤内に血栓は認めず,瘤-右房間交通の所見は認められなかった.また疣贅などの感染性心内膜炎を疑わせる所見や卵円孔開存,心房中隔欠損は認められず.コントラストエコーも施行したが安静時・バルサルバ負荷時のいずれにおいても右房左房間シャントの所見は認めなかった.リアルタイム3次元経食道心エコー図装置を用いることで動脈瘤の形態および周囲組織との関連の理解が容易であった.
【考察】
以上より本例は未破裂のバルサルバ無冠動脈洞瘤と診断された.有症状例,破裂例と異なり,無症候性の未破裂バルサルバ洞動脈瘤の治療方針に関しては自然歴が明らかではないが,近年では合併症が生じる前に手術を施行すべきとの報告が多い.本例は初発,脳梗塞発症後であることなどからまずは注意深い経過観察を行うこととなったが,瘤内の血栓形成から塞栓性合併症が生じうるとの報告もあり,注意が必要であると考えられた.