Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:症例Ⅰ

(S493)

長期経過を追えた左回旋枝領域心筋梗塞による左室仮性瘤の一例

A case of left ventricular pseudoaneurysm due to AMI of left circumflex artery occlusion

丹波 寛子1, 岡田 恵利1, 高橋 久美子1, 武石 茂美1, 相澤 健太郎2, 伏見 悦子2, 関口 展代2

Hiroko TAMBA1, Eri OKADA1, Kumiko TAKAHASHI1, Shigemi TAKEISHI1, Kentarou AIZAWA2, Etsuko FUSHIMI2, Nobuyo SEKIGUCHI2

1平鹿総合病院臨床検査科, 2平鹿総合病院循環器内科

1Department of Clinical Laboratry, Hiraka General Hospital, 2Department of Cardiology, Hiraka General Hospital

キーワード :

【はじめに】
仮性心室瘤は急性心筋梗塞で左室自由壁の破裂した心筋外壁の腔が外方に突出した部分をいう.真性心室瘤と異なり瘤を形成する外壁は薄く心筋の一部または心外膜であり,破れやすいので発見された場合は原則手術適応である.しかしその報告は稀であり,今回我々はその一例を経験したので報告する.
【症例】
50代男性.
【現病歴】
IgA 腎症による腎不全があり,24年前に3年間の透析後に生体腎移植を行い,以降免疫抑制剤を服用中だった.2011年11月朝食後から前胸部痛が出現し当院を受診した.心電図でⅡ・Ⅲ・aVF・V3-4でST低下を認め,心筋逸脱酵素の上昇があり,急性心筋梗塞と診断され,緊急心臓カテーテル検査が施行された.左回旋枝#13の閉塞がありPCIが施行された.
【臨床経過】
翌日から造影剤誘発性腎症により,腎機能が悪化し血液透析が施行された.第4病日,心不全が急速に悪化しショック状態となった.同日の心エコー検査では,左室後壁の心筋の脱落・心筋の解離様変化および瘤口15mm,瘤径30x40mm大の仮性瘤の形成が認められた.心液はみられず左回旋枝以外の領域の収縮は良好であった.MRは認めなかった.徐々に仮性瘤は拡大し,造影MRIでも同様に心筋解離様変化がみられた.第39病日には,瘤口25mm,瘤径33x52mmとなり,瘤内には左室から豊富な血流が観察され,壁の菲薄化も認めた.僧帽弁基部までその範囲は広がっているが,MRがごく少量であり,乳頭筋や腱索などの弁下部組織の機能障害は認めなかった.仮性瘤の破裂が危惧されたが,肝不全・腎不全・DICを合併していたため,そのコントロールがついた第43病日に仮性瘤口のパッチ閉鎖術が施行された.術中所見では,woozingによる心外膜と心膜の癒着がみられ,切迫破裂状態と思われた.手術翌日には,人工呼吸器を離脱し状態は安定していた.その後心臓リハビリテーションを施行し,2012年2月に退院となった.
【考察】
急性心筋梗塞発症後に仮性心室瘤を形成した報告は稀である.前壁より下壁心筋梗塞での合併頻度が高い.瘤壁に心筋組織が含まれないため,組織的には非常に脆弱で破裂の危険性が高く,発見時は早期の外科的治療を行うことが望ましい.真性心室瘤との鑑別が必要である.
【まとめ】
左回旋枝領域の急性心筋梗塞発症後,切迫破裂状態の左室仮性瘤を認めた一例を報告した.経過とともに瘤の拡大・解離様変化が進行したが,手術により救命し得た.術後も心エコー検査で経過を追っているが,パッチおよびその周囲が徐々にまた瘤状になっており,今後の治療方針につき検討中である.仮性瘤の診断および治療方針決定に心エコー検査が有用であった.