Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:症例Ⅰ

(S493)

心不全症状で発症した解離性心筋内血腫の一例

A Case of Intramyocardial Dissecting Hematoma Presenting With Acute Heart Failure

森 智美1, 岡田 昌子2, 福嶋 友孝1, 北田 弘美1, 小川 恭子1, 寺本 美穂1, 酒井 晋介3, 小笠原 延行2, 長谷川 新治2, 内藤 雅文4

Tomomi MORI1, Masako OKADA2, Tomotaka FUKUSHIMA1, Hiromi KITADA1, Kyouko OGAWA1, Miho TERAMOTO1, Shinsuke SAKAI3, Nobuyuki OGASAWARA2, Shinji HASEGAWA2, Masafumi NAITOU4

1大阪厚生年金病院中央検査室, 2大阪厚生年金病院循環器内科, 3大阪厚生年金病院内科, 4大阪厚生年金病院臨床検査科

1Department of Central Laboratory, Osaka Kouseinenkin Hospital, 2Division of Cardiology, Osaka Kouseinenkin Hospital, 3Division of Internal Medicine, Osaka Kouseinenkin Hospital, 4Department of Clinical Laboratory, Osaka Kouseinenkin Hospital

キーワード :

【はじめに】
解離性心筋内血腫 (Intramyocardial Dissecting Hematoma: IDH) は心破裂の亜型であり比較的稀な疾患である.先行する急性心筋梗塞が明らかでなく心不全症状で発症した症例を経験したので報告する.
【症例】
症例は 糖尿病性腎症で2005年から他院で維持透析中であった74歳の男性.2012年9月全身倦怠感と呼吸困難が出現し,SPO2低下と熱発,レントゲン上すりガラス状陰影を認めたため,溢水と肺炎疑いで当院に紹介入院となる.入院時のレントゲンにて心拡大,CTにて胸水貯留と肺水腫を認め,心機能評価目的で心臓超音波検査を施行した.左室全体に広範な壁運動異常を認め,心尖部心筋に低エコー領域が存在し,心外膜心筋はdyskinesisで心内膜心筋が収縮期に外側へ,拡張期に内側へflap状に動き心筋の解離を疑う所見であった.カラードプラにて左室内腔との交通を検出せず,IDHと診断した.左室駆出率はディスク変法で33%と著明に低下していた.左室拡張末期径64 mm,収縮末期径 53 mmと内腔も拡大し,テザリングによる重症僧帽弁閉鎖不全を認めた.入院後心筋逸脱酵素上昇を認めず,急性心筋梗塞直後の発症は否定された.その後施行した冠動脈造影で有意狭窄を認めず,造影CTでは血腫内に冠動脈や心腔内との交通を認めなかった.後日行った薬物負荷Tl心筋シンチグラムでは心尖部にTlの集積がなく再分布を認めないため,心尖部の残存心筋はないと判断した.破裂の危険性を考慮し,一旦手術的治療も考慮されたが,脳出血,急性硬膜外血腫後遺症など合併症もあり,保存的に経過を見ることとなった.IDHの領域は2ヶ月後の心臓超音波検査では高エコー領域に置き換わりつつあった.
【考察】
IDHは稀な疾患で急性心筋梗塞の合併症として発症することが多いが,本症例での関連性は明らかでなかった.保存的治療では予後不良とされてきたが,近年自然退縮したという報告もあり,手術適応については議論の余地が残る.保存的に2ヶ月後まで経過観察したが,IDHの血栓化の過程を観察している可能性がある.