Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:先天性心疾患Ⅱ

(S490)

欠損孔の同定に難渋した多孔性心房中隔欠損症の一例

A Case of Multiple Atrial Septal Defects Comprehensively Evaluated with Various Imaging Modalities

藤井 怜1, 森 三佳2, 森 雅之2, 高畠 周2, 吉牟田 剛2, 内山 勝晴2, 坪川 恒久1, 山岸 正和2

Satoru FUJII1, Mika MORI2, Masayuki MORI2, Syu TAKABATAKE2, Tsuyoshi YOSHIMUTA2, Katsuharu UCHIYAMA2, Tsunehisa TSUBOKAWA1, Masakazu YAMAGISHI2

1金沢大学附属病院麻酔科蘇生科, 2金沢大学循環器内科

1Department of Anesthesiology, Kanazawa University Hospital, 2Division of Cardiovascular Medicine, Kanazawa University

キーワード :

【背景】
心房中隔欠損は近年,カテーテル治療による閉鎖術が行われるようになり,術前に欠損孔の位置や大きさ,個数の評価が治療方針の選択に非常に重要である.しかし,中隔壁の薄さからエコーによる観察が困難な症例にも遭遇することが少なくない.
【症例】
61歳,女性.過去の健康診断で右軸偏位及び不完全右脚ブロックを指摘されたが,自覚症状はなく経過していた.今回,2ヶ月前に動悸を自覚した際,近医での経胸壁心エコー図で心房中隔欠損症(ASD)を指摘され,精査加療目的に当科紹介となった.
【術前検査所見】
2D経胸壁心エコー図(2D-TTE)では,卵円窩前上方の心房中隔に類円形欠損孔(①),及び左右シャント血流を認めた.他に,心窩部アプローチのカラードプラ法でASDを疑わせる左右シャント血流が3ヶ所認められた.1か所目は冠静脈洞開口部に隣接し(②),2か所目は卵円窩中央下方(③),3か所目は下大静脈開口部付近(④)にあり,②及び③は左房から右房,④は左房から下大静脈にシャント血流を認めた.しかしいずれも描出不良であり,欠損孔の詳細な評価は困難であった.さらに,右房内には下大静脈から冠静脈洞まで連続する隔壁様構造物が認められ,発達したEustachian valveと考えられた.2D経食道心エコー図(2D-TEE)では,①は径約8×8 mm大,rimはanterosuperior=3 mm,posterosuperior=15 mm,anteroinferior=15 mm,posteroinferior>20 mmであった.しかし,②〜④の欠損孔については,心房中隔の描出が不良であり,大きさや位置などの評価が困難であった.リアルタイム3D経食道心エコー図(RT3D-TEE)では,発達したEustachian valveに隣接する心房中隔が描出不良であったが,②〜④に相当する欠損孔の存在が示唆された.さらに,CTやMRIも行ったが,欠損孔②〜④の詳細(個数,連続性など)は評価困難であった.なお,右房及び右室拡大は顕著であったが,肺高血圧症は認められず,心臓カテーテル検査ではQp/Qs=2.39であった.
【手術所見】
卵円窩前上方に約1 cm大の欠損孔(①)を認めた他,下方に発達したEustachian valveに覆われる形で,約1 cm大の欠損孔が3つ並列していた(②〜④).欠損孔は全てdirect sutureで閉鎖された.
【術後検査所見】
人工心肺離脱直後の2D-TEE,および術後3日目の2D-TTEでは残存シャントは認められなかった.
【結論】
本症例は2D及びRT3D-TEEのみでは特定が難しく,2D-TTEと合わせて総合的に判断した多孔性ASDの一例である.CT,MRI,手術所見等を含めて報告する.