中村 政彦¹, 藤原 裕季¹, 松岡 聡志¹, 牧野 有高¹, 梅谷 健¹, 瀬戸 俊邦¹, 相沢 一徳¹, 渡辺 賢一², 福本 恭子³, 上野 和行³

Masahiko NAKAMURA¹, Yuki FUJIHARA¹, Satoshi MATUOKA¹, Aritaka MAKINO¹, Ken UMETANI¹, Toshikuni SETO¹, Kazunori AIZAWA¹, Kenichi WATANABE², Kyoko FUKUMOTO³, Kazuyuki UENO³

¹山梨県立中央病院循環器内科, ²新潟薬科大学薬学部臨床薬理学教室, ³新潟薬科大学薬学部薬物動態学研究室

¹Department of Cardiology, Yamanashi Prefectural Central Hospital, ²Department of Clinical Pharmacology, Niigata University of Pharmacy and Applied Life Sciences, ³Department of Pharmaceutical Sciences, Niigata University of Pharmacy and Applied Life Sciences

キーワード :

【目的】
carvedilol（以下Car）は拡張型心筋症など心不全や高血圧，狭心症に広く投与されるβ遮断薬である．日本人の心不全では投与量が5mg/日でも有効性が認められたという報告があるが，血中濃度と左心機能に関する研究は少ない．今回，Carの血中濃度と心エコー図における左心機能についての比較検討を行ったので報告する．
【方法】
心筋症を中心に心筋梗塞，高血圧性心疾患などによる心不全例のCar投与慢性期の21例29検体の血中濃度をHPLC法で測定し，心エコー図M-mode法で左室駆出率（EF），左室拡張終期径（EDD），収縮終期径（ESD），左房径（LAD），パルスドプラ法で左室急速流入波（E）と心房収縮波（A）の比（E/A），Eの減衰時間（DT）を求めた．血漿ヒト心房性ナトリウム利尿ホルモン（ANP）値，脳性ナトリウム利尿ホルモン（BNP）値を測定した．
【結果】
Carを2.5〜20（8.8±3.9:mean±SD）mg /日投与中に，前回投与後中央値225分の全検体のCar濃度は33.7±21.5（mean±SD）ng/ml，最大〜最小値2.7〜73.0 ng/ml，変動係数（CV） 0.6で個体差が大きかった．単位投与量で補正後の濃度も変動し個体差が大きかった．Car濃度はEFとY=0.53X＋39.6, R²=0.40, p＜0.005と正相関した．Car濃度はESDとはY=−0.36X＋48.5, R²=0.30, p＜0.05と負の相関を示し，EDDとはY=−0.25X＋59.9, R²=0.21, p＝0.054と負の相関傾向を示した．LAD，E/A，DT，血漿ANP，BNP値とは相関しなかった．
【結語】
Carは生体内利用率が低く，代謝酵素の遺伝子多型などにより血中濃度の個体差が多いとされる．本研究でもCVが大きく少量投与で高濃度となる例があり，個体差が大きかった．心エコー図のEF値はCar濃度と正相関し，ESDは負の相関を示し，慢性期の心不全ではCarの血中濃度が高い程良好な収縮期心機能が維持される可能性が示唆された．