Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:薬物治療

(S484)

ダビガトラン投与下で心源性塞栓症を発症した一例

A case of cardiogenic systemic embolism with a patient on dabigatran anticoagulation

内田 耕資1, 和田 靖明2, 貞廣 浩和3, 奥田 真一4, 野瀬 善夫1, 村上 和歌子1, 中村 武史1, 有吉 亨2, 原田 典子1, 矢野 雅文1

Kosuke UCHIDA1, Yasuaki WADA2, Hirokazu SADAHIRO3, Shinichi OKUDA4, Yoshio NOSE1, Wakako MURAKAMI1, Takeshi NAKAMURA1, Toru ARIYOSHI2, Noriko HARADA1, Masafumi YANO1

1山口大学大学院器官病態内科, 2山口大学医学部附属病院検査部, 3山口大学大学院脳神経外科, 4山口大学医学部附属病院先進救急医療センター

1Department of Medicine and Clinical Science, Yamaguchi University Graduated School of Medicine, 2Division of Laboratory, Yamaguchi University Hospital, 3Department of Neurosurgery, Yamaguchi University Graduated School of Medicine, 4Advanced Medical Critical Care Center, Yamaguchi University Hospital

キーワード :

症例は78歳男性.慢性心房細動でワーファリン内服中であったが全身性塞栓症の既往はなかった.外傷性急性硬膜下血腫で当院脳神経外科に入院となり直ちに開頭血腫除去術が施行された.止血確認後にヘパリン次いでワーファリンによる抗凝固療法が再開された.入院19日目に施行された経胸壁心エコー図では,左室拡張末期径は52mmと正常上限であり,左室駆出率は70%と正常範囲で,左室肥大や肺高血圧はみられず,下大静脈の呼吸性変動も保たれていた.左房は前後径で66mm,左房容積係数は167ml/m2と著明に拡大していたが,右房や左房内に明らかな血栓はみられなかった.入院28日目に頭蓋形成術が施行された際に,周術期の再ヘパリン化を経てワーファリンが再開されていたが,入院31日目よりダビガトラン110mg錠1日2回内服へ置換された.入院36日目に右上腕動脈急性塞栓症を発症したため,ダビガトランをヘパリンへ置換した後に,右上腕動脈血栓除去術が施行された.摘出された血栓は比較的新しい血栓であり,翌37日目に施行された経食道心エコー図において左心耳内に非可動性血栓が認められた.41日目からはダビガトランも110mg錠1日2回内服で再開され,ヘパリンは漸減中止された.52日目に再度施行された経食道心エコー図において左心耳内血栓は拡大傾向かつ浮動性も有しており(Figure),右房内にも血栓が認められた.塞栓症再発の高リスク群と判断し,同日に緊急で人工心肺下両心房内血腫除去術,右房形成ならびに左心耳縫縮術が施行された.同術施行により,右房内血栓(40x40mm大)が1つ,大小2つの左房内血栓が摘出された.病理所見では,いずれの心房内血栓も混合血栓であったが,白色血栓部の好中球の変性や,赤色・白色血栓の境界不明瞭化等の所見から,右房内血栓は陳旧性血栓であり,左房内血栓は新旧血栓が混在しているものと考えられた.なお,右房壁や右心耳に心内膜の欠損・障害像は認められなかった.術後よりワーファリンが再開され,以後は塞栓症の発症は見られていない.今回,我々は低用量ダビガトラン投与下で心源性と考えられる急性塞栓症を発症した一例について経験したため,文献的考察を交えて報告する.