Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:大動脈狭窄症

(S483)

経皮的大動脈弁形成術における心エコーの有用性 大動脈弁狭窄症5例の経験から

Usefulness of echocardiography for percutaneous transluminal aortic valvuloplasty in five patients with aortic stenosis

菅原 裕1, 岡山 悟志1, 上田 友哉1, 添田 恒有1, 竹田 征治1, 渡邊 真言1, 上村 史朗1, 藤本 眞一2, 斎藤 能彦1

Yu SUGAWARA1, Satoshi OKAYAMA1, Tomoya UEDA1, Tsunenari SOEDA1, Yukiji TAKEDA1, Makoto WATANABE1, Shiro UEMURA1, Shinichi FUJIMOTO2, Yoshihiko SAITO1

1奈良県立医科大学第1内科, 2奈良県立医科大学教育開発センター

1First Department of Internal Medicine, Nara Medical University, 2Education Development Center, Nara Medical University

キーワード :

【背景と目的】
我が国では,人口の高齢化とともに大動脈弁狭窄症患者が増加している.大動脈弁狭窄症の治療法の第1選択は大動脈弁置換術であるが,高齢であることに加え全身状態が不良であるために,置換術が施行できない患者が少なからず存在している.最近では経皮的大動脈弁植え込み術も試みられているが一般的には普及していない.今回,我々は,大動脈弁狭窄症5例に対して経皮的大動脈弁形成術(PTAV)を実施し,心エコーが術前,術中,術後にわたって有用であったので報告する.
【対象】
症例1は62歳,女性.維持透析患者であり,強皮症,間質性肺炎,および消化管出血を合併していた.症例2は91歳,男性.心不全入院を繰り返しており,両側内頚動脈狭窄と認知症を合併していた.症例3は85歳,女性.結核と膀胱癌の既往があり間質性肺炎を合併していた.症例4は80歳,男性.心不全入院を繰り返しており,Angiodysplasiaによる慢性貧血と認知症を合併しておりADLはベッド上であった.症例5は89歳,女性.両側内頚動脈狭窄を合併していた.
【方法】
PTAVの術前,術中,および術後1週間に心エコーを実施した.
【結果】
5例のPTAV術前のユーロスコアは9.49±8.26(2.39-20.42)であり,開胸による心臓手術の予測死亡率が高かった.術前の心エコーによる大動脈弁輪径の測定から直径21.2±0.84(20-22)mmのイノウエ・バルーンを選択した.術中は心エコーによりカテーテルの先端を確認しながら心房中隔穿刺を行い,PTAV直後に大動脈弁逆流や心タンポナーデなどの合併症がないことを確認した.術後の心エコーでは,大動脈弁最大圧較差が75.6±13.4から47.4±10.8 mmHgへ,弁口面積が0.62±0.13から0.88±0.08 cm2へ改善していた.さらに左室の収縮末期径は38.6±10.4から37.0±9.9 mmへ,駆出率は50.2±21.2から57.8±16.4%へ改善していた.また,患者のNYHAは3.6±0.55から1.6±0.55へ,BNPは1225.1±1784.1から241.3±190.3 pg/mlへ改善していた.
【結語】
我々は大動脈弁狭窄症5例に対しPTAVを実施した.心エコーはPTAVの術前,術中,術後にわたり重要な役割を果たした.PTAVは長期成績が不明であるため,大動脈弁の再狭窄について,今後,心エコーによるフォローアップが必要であると考えられた.