Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:ストレイン

(S475)

左室の回転や捻れ解析に関する2次元と3次元の違い

Difference of rotation/twist of the left ventricle between 2D and 3D speckle-tracking

阿部 康彦1, 米山 直樹2, 川岸 哲也1

Yasuhiko ABE1, Naoki YONEYAMA2, Tetsuya KAWAGISHI1

1東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部, 2東芝医用システムエンジニアリング株式会社ソフトウェア技術部

1Ultrasound Systems Division, Toshiba Medical Systems Corporation, 2Software Engineering Department, Toshiba Medical Systems Engineering Co.,Ltd.

キーワード :

【はじめに】
左室の回転や捻れについては,MRIのタギング法や心エコーの短軸像を用いた壁運動追跡技術(2D Speckle-Tracking: 2DST)により臨床での解析が行われてきている.これらの解析法は2次元断層像を用いているため,左室のshorteningに伴うthrough-planeの影響により,観察される回転成分は心筋の長軸方向について心時相の経過と共に別の局所領域(レベル)の情報が含まれる.一方で,心筋の3次元的な壁運動を追跡する技術(3D Wall Motion Tracking: 3DWMT)では,同一の長軸レベルを継続して観察した回転成分の取得が可能である.ここで,左室心筋は捻れ運動をしており,このことは長軸の各レベルにおいて回転成分が異なることを意味する.従って,shortening がある場合での2DSTと3DWMTでは互いに観察している長軸レベルが異なるために,両者で得られる回転成分は基本的に異なることになる.本報では,数値モデルデータを用いてこのことを調べた.
【方法】
長軸方向の各レベルについて正弦波状の回転分布(変化幅は±14度)を有する,shortening有(-10%)/無の3D捻れ数値モデルデータに対して,3DWMTによる回転成分の解析値と,固定の長軸レベルに関する短軸MPR像について2DSTで得た回転成分の解析値を得て,両者を比較した.
【結果】
3DWMTで得られたApical /Mid/ Baseの3領域における回転[度]は,shorteningの有無で殆ど変わらなかった(shortening無:A領域=-8.44, M領域 =-3.28, B領域 =11.13, shortening有:A領域=-8.40, M領域 =-3.14, B領域=11.22).一方,2DSTで得られたApical /Mid各々のMPR像における回転[度]はshorteningの有無により変化し,< >で示した期待値同等の値として観察された(shortening無:A断面=-8.8 <-9.0>, M断面 =4.0 <4.0>,shortening有:A断面=-9.6 <-10.0>, M断面 =7.8 <8.0>).捻れは長軸レベルの異なる2面間の回転の差で定義されるため,shortening がある場合の捻れについては,回転と同様に2DSTと3DWMTでは観察される値が異なることを意味する.
【結語】
左室のshorteningの影響で,2DSTと3DWMTでは観察される回転や捻れの値が異なることを示した.臨床研究において両者の値を比較する場合には,shorteningに起因するこの差異に注意する必要がある.