山本 昌良¹, 瀬尾 由広¹, 川松 直人¹, 佐藤 希美¹, 菅野 昭憲¹, 渥美 安紀子¹, 町野 智子¹, 中島 英樹², 石津 智子¹, 青沼 和隆¹

Masayoshi YAMAMOTO¹, Yoshihiro SEO¹, Naoto KAWAMATSU¹, Kimi SATO¹, Akinori SUGANO¹, Akiko ATSUMI¹, Tomoko MACHINO¹, Hideki NAKAJIMA², Tomoko ISHIZU¹, Kazutaka AONUMA¹

¹筑波大学循環器内科, ²筑波大学附属病院検査科

¹Cardiovascular Division, University of Tsukuba, ²Clinical laboratory, University of Tsukuba Hospital

キーワード :

【目的】
動物実験や開心術での研究において左心耳が左房圧の上昇を緩衝する役割を果たしているという報告がある．しかし，臨床現場において左房圧を実測できる機会は稀であり，左房圧の上昇に対する左房・左心耳の反応については明らかとなっていない．本研究の目的は，心房細動患者において，左房圧が左房容積および左心耳容積に与える影響を明らかとすることである．
【対象・方法】
対象は当院で心房細動に対し，カテーテルアブレーション術を施行された40例（平均年齢　58±10歳）．有意な弁膜症を有する症例や左室駆出分画が50％以下の症例は除外した．術中にBrockenbrough法を行い，左房圧を実測した．左房容積は2次元胸壁心エコー図法のシンプソン法より求めた．左心耳容積は左心耳を3次元経食道心エコー図法により記録し，オフライン解析ソフト（3D-GIQ）によって算出した．左房および左心耳容積を平均左房圧やE/E’と比較を行った．
【結果・考察】
左房容積係数は，慢性心房細動症例は発作性心房細動例と比べ有意に大であったが（46±16 VS 29±13ml/m2, P＜0.01），左心耳容積係数は両群間において有意な差は認められなかった（3.1±1.9 VS 4.2±3.1ml/m2, P=0.11）．また，左房圧の上昇は左心耳容積と有意な正の相関を認めたが（P=0.003, R=0.43），一方で左房容積との有意な関係は認められなかった．E/E’も同様に左心耳容積との有意な関係を認めたが（P＜0.001, R=0.47），左房容積との有意な関係を認めなかった．以上より，心房細動の持続に伴い左房容積は拡大するが左心耳容積への影響は少なく，左心耳は左房圧の上昇に対し拡大する傾向があることが示唆された．
【結論】
心房細動患者におい左心耳は左房圧の上昇に対し拡大し，圧の緩衝作用を果たしていることが示唆された．